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剣と剣が激しくぶつかり、高い金属音と共に火花が散る。



 強い…
ライアンさんの比じゃない。
いや、ライアンさんも手加減をしてくれてたのかもしれない。
これが本気の剣なのか…



ずしりと重く迫る剣を、僕は押し留めるのが精一杯だった。
 剣を交えてみて、あらためて実感した力の違い。
 適う筈がない。
 一瞬でも力を緩めれば、僕はこの鋭い剣に刺し貫かれてしまうだろう。
 今まで漠然としか感じたことのなかった死の恐怖が急に身近に感じられた。



その時だった。



 「やめろーーーー!」



それは聞き覚えのある声。
だけど、こんなに切羽詰った声を聞いたのは初めてだった。



 僕の剣を払いのけ、男は身を翻して父さんの方へ走り出した。



 僕は、その隙にアンリに剣を向けていた男の足を斬り付けた。
 男は、短いうめき声を上げ、その場に倒れ込む。



 「アンリ、こっちだ!」



 僕はアンリの手を取り、駆け出した。



 (……父さん!)



 僕がそこで目にしたのはいつもと同じ大きなエプロンをかけた父さん…
だけど、その身のこなしはまるで舞うようになめらかで隙がなく、男達の攻撃を交わしながらその手から剣を叩き落していて…
いつもの父さんでありながら、別人のようだった。
ライアンさんの話は本当だったんだ。
 加勢をしたくても入る隙がない。
 僕には、跳ね飛ばされた剣を拾い、男達の行動を見守ることしか出来なかった。
だけど、数人を相手にしていても明らかに父さんが優勢で、きっとじきに勝負はつくと思われたその時、遠くから蹄の音が響き渡った。



 (あと少しなのに…!)



 今度は、さっきよりも大勢だ。
いくら、父さんの腕があっても、それほどたくさんの相手を出来るはずがない。



 (今のうちにアンリをどこかへ…!)



そう考える間にも、馬はぐんぐん僕達の方へ近付いていた。
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