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神在琉葵(かみありるき)

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(……こ、これは……!)



 俺は目の前の光景に息を飲んだ。
どこにでもあるポプラに似たその木に、ぼんやりと鈍く光る木の実が一つだけ実っていたのだ。
その光りは、脈動するようにわずかに光りの強弱を放っている。



あの老人の言った通り、鶏の卵より一回り小さなその実…



(これが、不老不死の実なのか…?
いや、そんなことはない…出現すると言われた年はもう何年も過ぎてるんだ。)



 俺は恐る恐る果実に腕を伸ばし、震える手でその実をもぎとった。



 「あっ!」



 取ったと同時に光りが消えた。
 俺は、その実をポケットに突っ込み、足早に家に戻った。
 何度も後ろを振り返り、尾行している者がいないかと注意しながら…
言い伝えのせいか、新月の夜は森どころか町にも人影は少ない。
 俺は、誰にも見られることなく家に戻ることが出来た。



 長椅子に座り、酒を一杯ひっかけてから、俺はポケットの果実を取り出した。



 「う…」



 片手にすっぽりとおさまったその実は、真っ白だということがわかった。
 赤いような黄色いような色だと思っていたのに、実際にはその実は白く、俺はそれを見た瞬間、先日の伝言を思い出し、背中に冷たいものを感じた。



 (そうだ…あの伝言には白と黒の実と書いてあった。
だが、これは白だ。
 黒なんてどこにも…)



 果実をひっくり返しては、あらゆる角度から眺めた俺は、あることを思い付いた。



 (……まさかな…)



 俺は、近くにあった果物ナイフで、実を真っ二つに切り分けた。



 「うわっ!」



 真っ白な皮に包まれた果実の中身は、その対極の黒だった。



 (白と黒の実は毒の実……)



 俺は、身体からすーっと血の気が引いていくのを感じていた。
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