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手がかり

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「だ、誰だ、お前たち!
 一体、どこから……」

 「……ったく。
どのうさぎも同じことばかり言うのね。
そんなことはどうでもいいわ。
 私達、チクタクの修理屋を探してるの。
あなた、知らない?」

うさぎはぽかんとした顔でシュゼットのことを見上げていました。



 「聞こえなかったの?
 私達は、しゅ……」

 「修理屋なら、ついこないだここに来た。」

 「えっ!?」

 思いがけない返事に、私達は同時に声をあげていました。



 「い、今、あなたは、修理屋がここに来たって言ったの?」

 「あぁ、そうだとも。
 時計の中には調子が悪くなるものがけっこうあるんだ。
 放っておいたら勝手に良くなるものもあれば、修理屋が来る前に止まるものもある。
まぁ、それも時計の寿命だから仕方ないんだけどな。」

そう言ってうさぎはにやりと笑いました。



 「そ、それで、修理屋はどこに行ったの!?」

 「どこの誰ともわからないおまえ達に、そんな大切なことは教えられない。」

 「私達にとってもものすごく大切なことなの!
 教えなさいっっ!」

 「だめだ、だめだ!
 俺様は倉庫番なんだぞ!
 時計の安全を第一に考える必要があるんだ。
 修理屋に何かあったら、時計が守れない。
だから、そんなことは口が裂けても言えないなっ!」 

うさぎとシュゼットの押し問答はその後も続きました。
 修理屋のことは、うさぎにとって重大な秘密らしく、シュゼットがどれだけしつこく教えなさいと詰め寄っても、うさぎは首を縦には振りません。
やがて、シュゼットに異変が訪れました。
 爪が食い込みそうな程、拳を固く握りしめ、シュゼットの身体はぶるぶると小刻みに震え始めたのです。
 相当に怒りがこみ上げているのでしょう。
 彼女は震えながら、一歩…また一歩とうさぎににじり寄って行きます。
もしかしたら、シュゼットがうさぎに手を出すのではないかと、私はとても心配になりました。
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