神在琉葵(かみありるき)

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「おはよう!」

 会社でも、誰も私のことを怪しんではいないようだった。
 気にかかっていた仕事面でもミスのようなものは何もなかったようで、それどころか今までよりも少し評判が良くなっているような感じさえした。



 「優香!…金曜のこと訊かせてよ。
トシ君とはどうだったのかなぁ?」

お昼の社内食堂で、恭子が私に話しかけて来た。
 彼女の視線は私をすり抜け、その先のものを見ていた。



 「え……?」

 恭子の視線をそっと辿ると、私の斜め後ろに麻美が座っていた。
 恭子はそのことを知って、わざとそんなことを訊いたんだと私は悟った。



 「ジャーーン!」

 私は少し躊躇いつつも、恭子に画像フォルダの中のあの画像を見せた。
 普段の私だったら、そんなことは絶対にしない。
だけど…もう一人の私のおかげで、私は少し調子に乗っていたのかもしれない。



 「わぁ!優香もやるねぇ!
こんなきわどい写真撮るなんて…!
トシ君もあんたも幸せそうな顔して…あぁ、見てらんない!
こんな現場写真、あんたがアイドルだったら、えらいことだよ!」

その時、大きな音がして、後ろで動きがあったことを目の端で捉えた。
それは、麻美が席を立った音だった。
 食事も食べかけのまま、カツカツとヒールの音を高く響かせ、麻美はその場を去って行った。
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