鏡

１２

小雨のような景気の悪い涙はなかなか止まらない…
ついさっきまであんなに笑えてたバラエティも、少しも面白いと感じなくなった。
 私は、冷蔵庫からビールを持ちだし、無理矢理にそれを流しこんだ。
 映画やドラマではよく見るシーンだけど、お酒なんかで悩みが解決なんてするはずもないし、まさか自分がそんなことをするなんて思ってもみなかった。
 家にいたら、こんなこと絶対にしなかったと思う。
 一人だから…誰もいないから出来る事。



もちろん、ビールを飲んだ所で悲しい気持ちは少しも変わらなかった。
むしろ、アルコールのせいで感情が高ぶったのか余計に悲しくなって来て、やがて私は子供のように声を上げて泣き出してしまった。
 情け無い…悔しい…麻美にトシを取られたくらいでこんなにショックを受けてしまうなんて…



だけど、思いっきり泣いたおかげなのか、気持ちは少しすっきりしたように思えた。
 考えてみれば、大人になってからこんな風に泣いたことなんてなかったかもしれない。
 頭は少し疼くけど、なんとなく気持ちは落ち着いてきたような気がした。



 顔を洗いに洗面所に向かい、そのままほろ酔い気分で私は家の中をあちこちのぞいて回った。
どの部屋もとても綺麗で、お母さんがいつも真面目に掃除をしていることがわかった。
そうだ…私、ここに住もうかな。
 会社もやめてこっちでアルバイトでもして…
幸い、うちはお金にはそれほど不自由してないし、お父さんも私がここに住むと言ったら意外と喜んで生活費くらいは出してくれるかもしれない。



 （あ……そうだ…）



 私は急にある事を思い出し、おばあちゃんの部屋に向かった。