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「みんなには絶対に秘密よ。」
「わかってるって。
でも、すごいわね、お母さん。
あれ、全部、一人でやったの?」
「そうよ。
ほら…先月、私が腰を痛めたって言ってたでしょ?
あれ、薔薇を這わせようと思って買ったあのアーチを移動させた時にぐきっとやっちゃったの…」
「そうだったんだぁ…」
その時は特に何も考えてなかったけど、お母さんが腰が痛いって言ってたのはそういうことだったのかと、今ようやく得心した。
家では力仕事なんてほとんどしないお母さんが、あんな重いものを動かそうとするなんて、相当気合いが入ってるってことだ。
「ねぇ、お母さん…しょうら…」
「あ、パパが帰って来たわ。
じゃ、夜はしっかり戸締りして寝るのよ。
それと、火の元、気を付けてね!」
お母さんは早口でそう言うと、一方的に電話を切った。
別に、お父さんが帰って来たからってそんなに慌てて切ることないのに…
慌て者のお母さんに私は思わず失笑した。
緩んだ顔で見上げた柱時計は、いつの間にか夕方の時刻を指していた。
お母さんはいつも長電話。
ここに着いた時間から考えると、かれこれ一時間は話していたようだ。
私はシャワーで汗を流し、さっぱりした所で夕食を食べることにした。
作るのは面倒だったから、今夜はスーパーで買って来たお弁当。
冷蔵庫にちょっとしたものはあるとお母さんが言ってたからのぞいてみると、冷凍食品となぜだか缶ビールがたくさんあった。
家ではめったに飲まないのに、お母さんったらここではけっこう飲んでるのかしら?
そんなことを考えながら、私も普段はあまり飲まない缶ビールになんとなく手を伸ばした。
「みんなには絶対に秘密よ。」
「わかってるって。
でも、すごいわね、お母さん。
あれ、全部、一人でやったの?」
「そうよ。
ほら…先月、私が腰を痛めたって言ってたでしょ?
あれ、薔薇を這わせようと思って買ったあのアーチを移動させた時にぐきっとやっちゃったの…」
「そうだったんだぁ…」
その時は特に何も考えてなかったけど、お母さんが腰が痛いって言ってたのはそういうことだったのかと、今ようやく得心した。
家では力仕事なんてほとんどしないお母さんが、あんな重いものを動かそうとするなんて、相当気合いが入ってるってことだ。
「ねぇ、お母さん…しょうら…」
「あ、パパが帰って来たわ。
じゃ、夜はしっかり戸締りして寝るのよ。
それと、火の元、気を付けてね!」
お母さんは早口でそう言うと、一方的に電話を切った。
別に、お父さんが帰って来たからってそんなに慌てて切ることないのに…
慌て者のお母さんに私は思わず失笑した。
緩んだ顔で見上げた柱時計は、いつの間にか夕方の時刻を指していた。
お母さんはいつも長電話。
ここに着いた時間から考えると、かれこれ一時間は話していたようだ。
私はシャワーで汗を流し、さっぱりした所で夕食を食べることにした。
作るのは面倒だったから、今夜はスーパーで買って来たお弁当。
冷蔵庫にちょっとしたものはあるとお母さんが言ってたからのぞいてみると、冷凍食品となぜだか缶ビールがたくさんあった。
家ではめったに飲まないのに、お母さんったらここではけっこう飲んでるのかしら?
そんなことを考えながら、私も普段はあまり飲まない缶ビールになんとなく手を伸ばした。
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