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労働
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*
「やった!」
ついに一週間の水汲みが終わった。
すべての樽が、口まで一杯になっている。
「イザベラさん、今日も全部終わりました。」
「ご苦労だったね。」
約束の一週間が無事済んだせいか、俺達の頑張りを認めてくれたのか…イザベラはやけに優しく、機嫌が良かった。
「さぁ、これをお飲み。」
夕飯の時、俺達の前にグラスが差し出された。
薄い琥珀色をした酒が入っている。
「いただきます。」
バーバラの話によると、イザベラの造る酒はあまりうまくないらしい。
でも、まずいなんて言えるはずはない。
ここはお世辞でうまいと言うしかないか。
あれっ?
まずい酒を予想していたが、意外にもけっこうイケる味だった。
「どうだい?」
「はい。おいしいです。」
「正直に言っとくれよ。お世辞はいらないからね。」
「お世辞なんかじゃありません。
本当においしいです。」
「そうかい。そりゃあ良かった。」
イザベラは、とても満足したような顔で頷いた。
「実はね…今回はユリウスにアドバイスをしてもらったんだ。
それで、材料の配合を変えてみた。
そしたら、ずいぶんと味が変わってね。」
イザベラはユリウスの方を見て、微笑んだ。
「そうだったんですか。」
なるほど。
ユリウスは、酒造りの材料の相談に乗ってやってたのか。
だから、毎晩、一緒に酒を飲んでたんだな。
そう考えたら、今までの不満も少し和らいだ。
*
「おはようございます。
すみません…遅くなって…」
一週間が済んだことで気が抜けたのか、俺は少し寝過ごしてしまった。
三人はもう食卓について食事をしていた。
俺が席に着くと、アランが給仕をしてくれた。
起きるのが遅いと、ユリウスにいやみを言われるかと思ったが、不思議と何も言われなかった。
「あんた達、一週間、本当に良く働いてくれたね。」
イザベラの声は昨夜同様とても優しい。
「いえ、そんな…」
「うちの弟子よりもよく働いてくれたよ。」
イザベラは本当に機嫌が良さそうだ。
「さて、と…」
俺が朝食を食べ終わる少し前に、イザベラが席を立った。
イザベラが戻ってきた時、 片手には鳥籠を持っており、その中にはアレクシスがいた。
「アレクシス!」
「約束通り、この子はあんたのもんだ。」
「ありがとう。感謝する。」
ユリウスは本当に嬉しそうだ。
「やった!」
ついに一週間の水汲みが終わった。
すべての樽が、口まで一杯になっている。
「イザベラさん、今日も全部終わりました。」
「ご苦労だったね。」
約束の一週間が無事済んだせいか、俺達の頑張りを認めてくれたのか…イザベラはやけに優しく、機嫌が良かった。
「さぁ、これをお飲み。」
夕飯の時、俺達の前にグラスが差し出された。
薄い琥珀色をした酒が入っている。
「いただきます。」
バーバラの話によると、イザベラの造る酒はあまりうまくないらしい。
でも、まずいなんて言えるはずはない。
ここはお世辞でうまいと言うしかないか。
あれっ?
まずい酒を予想していたが、意外にもけっこうイケる味だった。
「どうだい?」
「はい。おいしいです。」
「正直に言っとくれよ。お世辞はいらないからね。」
「お世辞なんかじゃありません。
本当においしいです。」
「そうかい。そりゃあ良かった。」
イザベラは、とても満足したような顔で頷いた。
「実はね…今回はユリウスにアドバイスをしてもらったんだ。
それで、材料の配合を変えてみた。
そしたら、ずいぶんと味が変わってね。」
イザベラはユリウスの方を見て、微笑んだ。
「そうだったんですか。」
なるほど。
ユリウスは、酒造りの材料の相談に乗ってやってたのか。
だから、毎晩、一緒に酒を飲んでたんだな。
そう考えたら、今までの不満も少し和らいだ。
*
「おはようございます。
すみません…遅くなって…」
一週間が済んだことで気が抜けたのか、俺は少し寝過ごしてしまった。
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起きるのが遅いと、ユリウスにいやみを言われるかと思ったが、不思議と何も言われなかった。
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イザベラの声は昨夜同様とても優しい。
「いえ、そんな…」
「うちの弟子よりもよく働いてくれたよ。」
イザベラは本当に機嫌が良さそうだ。
「さて、と…」
俺が朝食を食べ終わる少し前に、イザベラが席を立った。
イザベラが戻ってきた時、 片手には鳥籠を持っており、その中にはアレクシスがいた。
「アレクシス!」
「約束通り、この子はあんたのもんだ。」
「ありがとう。感謝する。」
ユリウスは本当に嬉しそうだ。
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