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災難
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「おぉ…コンパスがもとに戻った。」
ユリウスが珍しく嬉しそうに微笑んだ。
奴が微笑むなんて、明日は雨か、それとも何か悪いことの前触れか…!?
やはり、思ってた通りだった。
しばらく歩いて行くと、コンパスは元の通りに、一定の場所を指し示すようになった。
フクロウじいさんの言った通り、あの近辺にはなにか特別なものがあるんだろう。
それが何なのかは、俺には見当もつかないが…
目標をみつけたユリウスは、俺達のことを振り向きもせず、一人でどんどん進んで行く…
「なぁ、ステファニー…」
「なんだ?」
「ところで、あんた…なんだって、あんなにカンが良いんだ?
それに、本当に度胸があるよな。びっくりしたよ。」
アランは、先日の呪われた城でのことを言ってるんだ。
「どうしてって…まぁ、生まれつきカンは良い方だったんだ。
度胸が良いかどうかはわからないけど…」
「そうか…あんたが男だったら、凄腕のトレジャー・ハンターになれたかもしれないぜ。
俺なんかとは違ってな。」
そんなことを言われて、俺は、曖昧に笑うしかなかった。
「あ……」
その時、俺の頭に不意にひらめくものがあった。
「アラン!今わかった!
あのスイッチ…」
「スイッチ…?」
アランは小さく首を傾げた。
「あぁ、貯蔵庫のそばの壁にあったあの出っ張りだ。
上のは、隠し扉を閉めるものだった…」
「そうだな。で、下のは押しても何も起こらなかった…」
「そう、そいつだ!
あのスイッチは、仕掛けを作動しなくするスイッチだったんだ、きっと…」
「仕掛けを…?
あぁ、そうか!
あの城の者が宝物庫に行く時のためのものだな!?」
「そういうこと…きっとそうに違いない。」
もやもやしてた謎が解けてすっとした。
「あんたは本当に頭が良いんだなぁ…」
「頭は良くない。
カンだよ、カン。」
「いや、あんたは相当な切れ者だ。」
アランは本心からそう言ってくれてるみたいだ。
なんだか、ちょっと照れくさい。
「遅いぞ!早く来い!」
アランとしゃべりながらちんたら歩いてたせいか、いつの間にかユリウスとはずいぶん距離が離れていた。
ユリウスが目を三角にして、大きな声で怒鳴る。
全くうるさいったらありゃしない。
「急ごうぜ!」
俺達は小走りでユリウスの後を追った。
「おぉ…コンパスがもとに戻った。」
ユリウスが珍しく嬉しそうに微笑んだ。
奴が微笑むなんて、明日は雨か、それとも何か悪いことの前触れか…!?
やはり、思ってた通りだった。
しばらく歩いて行くと、コンパスは元の通りに、一定の場所を指し示すようになった。
フクロウじいさんの言った通り、あの近辺にはなにか特別なものがあるんだろう。
それが何なのかは、俺には見当もつかないが…
目標をみつけたユリウスは、俺達のことを振り向きもせず、一人でどんどん進んで行く…
「なぁ、ステファニー…」
「なんだ?」
「ところで、あんた…なんだって、あんなにカンが良いんだ?
それに、本当に度胸があるよな。びっくりしたよ。」
アランは、先日の呪われた城でのことを言ってるんだ。
「どうしてって…まぁ、生まれつきカンは良い方だったんだ。
度胸が良いかどうかはわからないけど…」
「そうか…あんたが男だったら、凄腕のトレジャー・ハンターになれたかもしれないぜ。
俺なんかとは違ってな。」
そんなことを言われて、俺は、曖昧に笑うしかなかった。
「あ……」
その時、俺の頭に不意にひらめくものがあった。
「アラン!今わかった!
あのスイッチ…」
「スイッチ…?」
アランは小さく首を傾げた。
「あぁ、貯蔵庫のそばの壁にあったあの出っ張りだ。
上のは、隠し扉を閉めるものだった…」
「そうだな。で、下のは押しても何も起こらなかった…」
「そう、そいつだ!
あのスイッチは、仕掛けを作動しなくするスイッチだったんだ、きっと…」
「仕掛けを…?
あぁ、そうか!
あの城の者が宝物庫に行く時のためのものだな!?」
「そういうこと…きっとそうに違いない。」
もやもやしてた謎が解けてすっとした。
「あんたは本当に頭が良いんだなぁ…」
「頭は良くない。
カンだよ、カン。」
「いや、あんたは相当な切れ者だ。」
アランは本心からそう言ってくれてるみたいだ。
なんだか、ちょっと照れくさい。
「遅いぞ!早く来い!」
アランとしゃべりながらちんたら歩いてたせいか、いつの間にかユリウスとはずいぶん距離が離れていた。
ユリウスが目を三角にして、大きな声で怒鳴る。
全くうるさいったらありゃしない。
「急ごうぜ!」
俺達は小走りでユリウスの後を追った。
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