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魔女、再び
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明日の朝、さっそくこのことをユリウスに教えてやろう。
魔女の家の方角と、コンパスの指し示す方向が同じなら間違いないってことだ。
「なぁ、もうそろそろ帰らないか?」
アランが眠そうな顔をしてそう言った。
酒はほんの少ししか飲んでないが、弱いからもう酔ったんだろう。
「まだ来たばかりじゃないか。
なんなら、あんた、先に戻ったらどうだ?」
「何言ってんだ。
あんたが帰らないなら、俺だって帰らない!」
今までにもしつこい女に惚れられたことはあったけど…
女の場合は、まだ可愛いげもある。
だが、男に惚れられても困るばかりだ。
俺はいずれ男に戻るんだから!
男に戻って、エリーズと幸せに暮らすんだからな…!
そんなことを思ったら、エリーズの顔が頭に浮かんだ。
大きな黒い瞳、つんとした高い鼻、ふくよかな赤い唇…
あぁ、俺はまだあの魅力的な唇に触れることさえもなく、こんなことになっちまったんだ。
本当になんてことだ。
酒を飲んだせいか、洗いざらい我が身の不幸をぶちまけたくなった。
だが、そんなこと話したって、誰が信じてくれるっていうんだ。
それに、話したら俺はカエルに変わっちまう…言えるはずがない…
「くそーーー!」
俺は、グラスの酒を一気に飲み干した。
周りの男達から拍手がわきあがり、空になったグラスにはまたなみなみと酒が注ぎこまれた。
「今夜は飲むぞーーー!」
俺は、再び、酒を飲み干した。
そうだ、今夜は思いっきり飲もう!
滅多にないことだ。
しかも、俺達は、生死の淵から生還したばかりなんだ。
今夜くらい羽目をはずしたって良いだろう。
「もう一杯!」
俺は注がれるままに、次々と酒を飲み干した。
魔女の家の方角と、コンパスの指し示す方向が同じなら間違いないってことだ。
「なぁ、もうそろそろ帰らないか?」
アランが眠そうな顔をしてそう言った。
酒はほんの少ししか飲んでないが、弱いからもう酔ったんだろう。
「まだ来たばかりじゃないか。
なんなら、あんた、先に戻ったらどうだ?」
「何言ってんだ。
あんたが帰らないなら、俺だって帰らない!」
今までにもしつこい女に惚れられたことはあったけど…
女の場合は、まだ可愛いげもある。
だが、男に惚れられても困るばかりだ。
俺はいずれ男に戻るんだから!
男に戻って、エリーズと幸せに暮らすんだからな…!
そんなことを思ったら、エリーズの顔が頭に浮かんだ。
大きな黒い瞳、つんとした高い鼻、ふくよかな赤い唇…
あぁ、俺はまだあの魅力的な唇に触れることさえもなく、こんなことになっちまったんだ。
本当になんてことだ。
酒を飲んだせいか、洗いざらい我が身の不幸をぶちまけたくなった。
だが、そんなこと話したって、誰が信じてくれるっていうんだ。
それに、話したら俺はカエルに変わっちまう…言えるはずがない…
「くそーーー!」
俺は、グラスの酒を一気に飲み干した。
周りの男達から拍手がわきあがり、空になったグラスにはまたなみなみと酒が注ぎこまれた。
「今夜は飲むぞーーー!」
俺は、再び、酒を飲み干した。
そうだ、今夜は思いっきり飲もう!
滅多にないことだ。
しかも、俺達は、生死の淵から生還したばかりなんだ。
今夜くらい羽目をはずしたって良いだろう。
「もう一杯!」
俺は注がれるままに、次々と酒を飲み干した。
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