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惑わしの森

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「ところで、ここにはどんなお宝があるって言われてるの?」

フクロウのことから話題を逸らせようと、俺はそんなことを質問してみた。
実際、聞きたいことでもあったし…



「それが…そう詳しいことがわかってるわけじゃないんだ。
何でも、ここにはものすごいお宝があるって言われてるだけで…」

「なんだって?たったそれだけを手掛かりに、こんなところに来たっていうのか?」

「いや、もちろんそれだけじゃない。
この森の中にある、『ありの巣』の中にお宝があるっていう話なんだ。」

「ありの巣?」

「それでは、お宝は土の中にあるっていうことなのか?」

今まで黙ってたユリウスが横から口をはさんだ。



「いや、そうとは限らない。
宝にまつわる言い伝えは、直接的なものではなく、何か似たものに例えたりすることが多いんだ。
実際、ありの巣にお宝を隠すなんてこと、難しいだろ?」

「なるほど。」

ユリウスは大きく頷いた。



「あんた、よく知ってるんだな。」

「え?わ、私はただ一般論を言っただけよ。
そ、そんなことより、お宝はみつかったの?」

「いや…ここに来てからは、お宝を探すどころかここで生き延びることに精一杯で…
最近になってようやくゆとりは出て来たものの、そんなもの見つけたって、どうせここからは出られないんだ。
そう思ったら、探す気にもなれなくてな。」

「なるほどな…」

奴のいうことももっともかもしれない。
しかし、『ありの巣』という手掛かりを得ていながら、なんとももったいない話だ。
みつけられるものならなんとか見つけたいもんだ。



「あんた、この森には長いって言ってたな。
うろうろしてる間にありの巣らしき場所には行きあたらなかったのか?」

「あぁ、多分、この森の端から端までうろついたんじゃないかって思うくらい彷徨った、いろんなところを彷徨ったが、そんなものはどこにもなかった。」

「そっか…そりゃあまぁそんなに簡単にみつかるはずもないけどな。」

「なんだ?あんた、お宝に興味があるのか?」

「え?ま、まぁ…ね。
お宝なんて、見たことがないから…」

俺はそう言って、へらへらと笑って誤魔化した。
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