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惑わしの森
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「あぁ、確かに昨夜見た。
白いフクロウはあっちの方に飛んで行ってたぜ。」
婆さんの作ってくれたコンパスは、正真正銘、本物の魔法のコンパスだった。
行く先々で、俺達はアレクシスの足跡をみつけた。
ただ、いつもアレクシスが去った後で、追い付くにはまだ遠い。
「まずいな。
この分じゃなかなか追いつけねぇ。
そうだ、あんた、何か術は使えないのか?
たとえば、空を飛ぶとか、瞬間的に場所を移動するとか…」
「そんなことが出来れば、最初からこんなまどろっこしい探し方はしていない。
私は魔法使いではないのだ。」
「なんだよ、使えねぇ奴だな。
俺にこんな呪いがかけられるなら、そのくらいの魔法、使えるようになれよ。」
「呪いと魔法は別のものだ。」
「あぁ、そうですか…はいはい。」
奴に話させるとまたややこしいことになりそうだったから、俺は、そこで話を打ち切った。
あぁ、本当に苛々する。
こいつとは本当に気が合わないというのかなんというのか…
でも、苛々したところでどうにもならない。
俺は今、こいつと別れることは出来ないんだから。
なんとか、アレクシスをみつけて呪いを解いてもらわなきゃ、エリーズと結婚出来ないんだから。
俺は大きく深呼吸をして、気持ちを鎮めた。
(頑張れ、俺!
我慢だ、我慢!!)
「えっと…アレクシスの行き先は今度は北東だな?」
「あぁ、そうだ。」
「じゃあ、頑張って行こうぜ!」
俺は、無理して明るい声を出してやったのに、ユリウスは素知らぬ顔で歩いて行く。
頭にかーっと血が上るのを感じながらも、俺は懸命に自分自身をなだめた。
(いつものことだ、気にしない、気にしない…)
その間にも、奴は長い足ですたすたと進んで行く。
俺はその後を小走りで必死になって着いて行った。
奴の後ろ姿に何度も拳を振り上げて、あっかんべーをしてやった。
そんなことで気持ちが晴れることはなかったが、なにもせずにはいられなかったんだ。
「あぁ、確かに昨夜見た。
白いフクロウはあっちの方に飛んで行ってたぜ。」
婆さんの作ってくれたコンパスは、正真正銘、本物の魔法のコンパスだった。
行く先々で、俺達はアレクシスの足跡をみつけた。
ただ、いつもアレクシスが去った後で、追い付くにはまだ遠い。
「まずいな。
この分じゃなかなか追いつけねぇ。
そうだ、あんた、何か術は使えないのか?
たとえば、空を飛ぶとか、瞬間的に場所を移動するとか…」
「そんなことが出来れば、最初からこんなまどろっこしい探し方はしていない。
私は魔法使いではないのだ。」
「なんだよ、使えねぇ奴だな。
俺にこんな呪いがかけられるなら、そのくらいの魔法、使えるようになれよ。」
「呪いと魔法は別のものだ。」
「あぁ、そうですか…はいはい。」
奴に話させるとまたややこしいことになりそうだったから、俺は、そこで話を打ち切った。
あぁ、本当に苛々する。
こいつとは本当に気が合わないというのかなんというのか…
でも、苛々したところでどうにもならない。
俺は今、こいつと別れることは出来ないんだから。
なんとか、アレクシスをみつけて呪いを解いてもらわなきゃ、エリーズと結婚出来ないんだから。
俺は大きく深呼吸をして、気持ちを鎮めた。
(頑張れ、俺!
我慢だ、我慢!!)
「えっと…アレクシスの行き先は今度は北東だな?」
「あぁ、そうだ。」
「じゃあ、頑張って行こうぜ!」
俺は、無理して明るい声を出してやったのに、ユリウスは素知らぬ顔で歩いて行く。
頭にかーっと血が上るのを感じながらも、俺は懸命に自分自身をなだめた。
(いつものことだ、気にしない、気にしない…)
その間にも、奴は長い足ですたすたと進んで行く。
俺はその後を小走りで必死になって着いて行った。
奴の後ろ姿に何度も拳を振り上げて、あっかんべーをしてやった。
そんなことで気持ちが晴れることはなかったが、なにもせずにはいられなかったんだ。
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