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魔女
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「ここだ!」
「……確かに深い森だな。」
次の朝早くから、俺達は森の中を歩き回った。
森には小動物がたくさんいるが、この森の中にアレクシスがいたとしても、みつけられる可能性は低いように感じられた。
何しろ、この森はとんでもなく広いんだ。
「アレクシスーーー!
どこにいるんだーーー!」
「……やめろ。
そんな品のない声で叫んでは、出てくるものも出て来なくなってしまう。」
「て、てめぇ……」
俺は言いかけた言葉を無理に飲み込み、振り上げそうになった拳をぐっと押さえた。
「じゃ、じゃあ、てめ…じゃない…あんたが呼んでみたらどうだ?」
「普段、名前を呼ぶようなことはない。」
「い、今は、普段とは事情が違うんじゃないですか?」
俺はそう言って、全力で微笑んだ。
今までで最高に無理した愛想笑いだ。
「お、おいっ……」
奴は、俺のそんな努力をすっかり無視して、どんどん森の中へと入っていく。
(畜生!!)
悔しいが、こんなところにぼーっと突っ立ってるわけにはいかない。
俺は怒りのために震えだす身体をひきずって、奴の後を小走りで着いていった。
「ちょっと一休みしようぜ。」
歩いても歩いてもあたりの風景は少しも変わらない。
そんな状況に気持ちは焦り、疲れは増した。
ついでに腹も減って来て、俺は少し拓けた場所で休むことを提案した。
反対もせず、黙って俺の言うことを聞いたのは、きっと奴も疲れてたからだと思う。
「まぁ、食えよ。」
俺が差し出したパンを受け取り、奴は黙ってそれを食べ始めた。
「なぁ…フクロウってのは夜行性だろ?
夜、探した方が良いんじゃないのか?」
俺がそう言うと、奴は水筒の水をごくごくと飲み始めた。
「……アレクシスをここいらのフクロウと一緒にするな。
あいつは特別なフクロウだ。」
「……あぁ、そうですか。」
俺がなにか一言言うと、いつもこんな風にそれを否定しやがる。
早くフクロウをみつけて、こんな奴とはさっさとおさらばしたいもんだ。
「なにかもっとこう…効率の良い探し方はないのか?」
「あいにくと俺は頭が悪いもんでな。
やみくもに探すことしか思いつかない。
あんたならもっと良い方法を知ってるんじゃないのか?」
俺がそう言うと、奴は不機嫌そうに眉間に皺を寄せ、俺を睨みつけた。
「ここだ!」
「……確かに深い森だな。」
次の朝早くから、俺達は森の中を歩き回った。
森には小動物がたくさんいるが、この森の中にアレクシスがいたとしても、みつけられる可能性は低いように感じられた。
何しろ、この森はとんでもなく広いんだ。
「アレクシスーーー!
どこにいるんだーーー!」
「……やめろ。
そんな品のない声で叫んでは、出てくるものも出て来なくなってしまう。」
「て、てめぇ……」
俺は言いかけた言葉を無理に飲み込み、振り上げそうになった拳をぐっと押さえた。
「じゃ、じゃあ、てめ…じゃない…あんたが呼んでみたらどうだ?」
「普段、名前を呼ぶようなことはない。」
「い、今は、普段とは事情が違うんじゃないですか?」
俺はそう言って、全力で微笑んだ。
今までで最高に無理した愛想笑いだ。
「お、おいっ……」
奴は、俺のそんな努力をすっかり無視して、どんどん森の中へと入っていく。
(畜生!!)
悔しいが、こんなところにぼーっと突っ立ってるわけにはいかない。
俺は怒りのために震えだす身体をひきずって、奴の後を小走りで着いていった。
「ちょっと一休みしようぜ。」
歩いても歩いてもあたりの風景は少しも変わらない。
そんな状況に気持ちは焦り、疲れは増した。
ついでに腹も減って来て、俺は少し拓けた場所で休むことを提案した。
反対もせず、黙って俺の言うことを聞いたのは、きっと奴も疲れてたからだと思う。
「まぁ、食えよ。」
俺が差し出したパンを受け取り、奴は黙ってそれを食べ始めた。
「なぁ…フクロウってのは夜行性だろ?
夜、探した方が良いんじゃないのか?」
俺がそう言うと、奴は水筒の水をごくごくと飲み始めた。
「……アレクシスをここいらのフクロウと一緒にするな。
あいつは特別なフクロウだ。」
「……あぁ、そうですか。」
俺がなにか一言言うと、いつもこんな風にそれを否定しやがる。
早くフクロウをみつけて、こんな奴とはさっさとおさらばしたいもんだ。
「なにかもっとこう…効率の良い探し方はないのか?」
「あいにくと俺は頭が悪いもんでな。
やみくもに探すことしか思いつかない。
あんたならもっと良い方法を知ってるんじゃないのか?」
俺がそう言うと、奴は不機嫌そうに眉間に皺を寄せ、俺を睨みつけた。
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