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山を越え街道に出ると、セザールはランプを袋に仕舞い、さらに加速しながら駆け続けた。
セザールの全身は滝のような汗にまみれ、身体は熱く火照っていた。
まるで、自分のものではないかのような感覚を感じる程、彼の足は規則的に働き続けていた。

 押さえきれない程の高揚感にセザールは飛び上がり奇声を上げ、狂ったように駆け続けた。



 彼はずっと思い描いた幸せをようやく手に入れた……



(後は、時が過ぎるのを待つだけだ!!)



セザールは、この世に生まれて以来、最高の満足感に酔いしれていた。



 (この分ならユースで馬車を待つ必要はないかもしれない。
レスターまで駆け抜けられそうだ!)



それは、セザールが迷った部分でもあった。
 簡単な変装はしているとはいえ、馬車に乗ってもし知り合いにでも出会ったら…という不安はあった。
だが、大岩から小島まで泳ぎ、そこから小舟で漕ぎ続け、さらに夜通し走り続ける程の体力が残っているかどうかを考え、より確実な方を選んだのだ。
この小さな予定の変更が、セザールの運命を狂わせた。



 「あ…あ、あぁーーーーっっ!!」



セザールには、一体、なにが起きたのか理解出来なかった。
 何かに蹴躓いたと思った瞬間、彼の身体は宙に浮き、その後はごろごろと斜面を転がり落ちた。
あちこちを何かに打ち付け、その度に痛みを感じたが、転がるのが止まった時の痛みはそれまでのものとは比べ物にならないものだった。



 頭に感じた激しい衝撃…生温かいものが流れ出す感触を最後に、セザールの意識は途絶えた。



 彼の計画は、あと一歩というところで、予想外の展開を迎えたのだった。

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