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「初めまして。
私、山本祥子(やまもとしょうこ)と申します。」
「初めまして。
俺は、関口学です。」
私がそんなことを思いついたのは、ただの気まぐれからだった。
彼のことはもうとっくに忘れたはずだった。
いや、実際に忘れていた。
けれど、不意に思い出したのだ。
あまりに退屈だったから…
私は、彼に接触した。
わざと彼にぶつかり、足を踏んだのだ。
そして、そのお詫びに…と、彼を食事に誘った。
彼は私にはまるで気付いていない様子だった。
名前を言う時は少しばかり緊張したけれど、彼は私の名前を聞いても全然反応しなかった。
確かにありふれた名前だし、本当は『さちこ』と読むのをあえて『しょうこ』と詐称はしたけれど…
それでも、少しは私を思い出して動揺するんじゃないかと思ったけど、そんな素振りは全くなかった。
「足は痛みませんか?」
「いえ、全然。」
「本当にごめんなさいね。」
「いえ、踏んでいただいて感謝してますよ。」
「……どうしてですか?」
「だって、そのおかげであなたみたいに素敵な方と、こうして食事が出来るんですから。」
「まぁ…」
昔から口のうまい男だった。
しかし、自分のものになると、そんな女を喜ばせるようなことは一言だって言わない。
あくまでも手に入れるまでのことなのだ。
今、改めて見てみると、どうしてこんな男にあんなに執着してしまったのか、まるでわからなかった。
あの頃はとても格好良いと感じてたのが嘘みたいだ。
もはや何の関心もない男だけれど、退屈しのぎに、私は彼への復讐をすることにしたのだ。
「初めまして。
私、山本祥子(やまもとしょうこ)と申します。」
「初めまして。
俺は、関口学です。」
私がそんなことを思いついたのは、ただの気まぐれからだった。
彼のことはもうとっくに忘れたはずだった。
いや、実際に忘れていた。
けれど、不意に思い出したのだ。
あまりに退屈だったから…
私は、彼に接触した。
わざと彼にぶつかり、足を踏んだのだ。
そして、そのお詫びに…と、彼を食事に誘った。
彼は私にはまるで気付いていない様子だった。
名前を言う時は少しばかり緊張したけれど、彼は私の名前を聞いても全然反応しなかった。
確かにありふれた名前だし、本当は『さちこ』と読むのをあえて『しょうこ』と詐称はしたけれど…
それでも、少しは私を思い出して動揺するんじゃないかと思ったけど、そんな素振りは全くなかった。
「足は痛みませんか?」
「いえ、全然。」
「本当にごめんなさいね。」
「いえ、踏んでいただいて感謝してますよ。」
「……どうしてですか?」
「だって、そのおかげであなたみたいに素敵な方と、こうして食事が出来るんですから。」
「まぁ…」
昔から口のうまい男だった。
しかし、自分のものになると、そんな女を喜ばせるようなことは一言だって言わない。
あくまでも手に入れるまでのことなのだ。
今、改めて見てみると、どうしてこんな男にあんなに執着してしまったのか、まるでわからなかった。
あの頃はとても格好良いと感じてたのが嘘みたいだ。
もはや何の関心もない男だけれど、退屈しのぎに、私は彼への復讐をすることにしたのだ。
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