めぐり逢い～遥かなる時の彼方で

２２

「そうって……それだけなの？
あなた、私がベルナール様と結婚してもなんともないっていうの？」

 「違う、そうじゃない。
だけど…僕は、一介のサラリーマンだ。
どれほど君を愛していようとも、君に裕福な生活はさせてあげられない。
だけど、ベルナールさんと結婚すれば…君は誰よりも裕福な暮らしが出来るだろう。
 画家になる夢だって…」

 「私、裕福な暮らしなんて望んじゃいないわ！
それに、お金の力で画家になんてなりたくない！」

 「アンナ……」



それは嘘ではないだろう。
 彼女はとてもまっすぐな性格だ。
お金に執着を持つタイプでもない。



でも…ベルナールと自分を比べると、とても自分が惨めな気分になった。
 彼のことは雑誌でも見たことがあるが、背がすらりと高く、まるで芸能人のように整った顔つきだった。
 見た目も財力も…何をとっても僕は彼の足元にも及ばない。



 「ジュリアン…あなた、私のことを愛してないの？」

 「……愛してるに決まってるだろ。」

 「だったら、どうしてすぐに帰って来いって言ってくれないの？」

 「それは……」



 僕は再び口籠った。
なんと言えば良いのだろう？



 本心を言うことは簡単だ。
だけど、それは彼女の幸せを壊すことになるのではないだろうか？
 考えれば考える程、言葉にならない。



 「ジュリアンの馬鹿！」



 彼女は電話を切った。
 煮え切らない僕に苛立つように、目に涙をにじませて…



（ごめん…アンナ……）



 暗くなった画面をみつめながら、僕は心の中で彼女に詫びることしか出来なかった。