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 「あんたは一体なんでやらかしちまったんだ?」



ある日の休憩時間…ダグに唐突にそんな質問をされた。



 「僕は…何もやってない。」



そんなこと、誰も信じちゃくれないだろうし、ダグも本当に関心があって聞いたわけじゃないだろう。
こんな時は、笑って誤魔化せば良いものを、僕はまともに答えてしまっていた。



 「何もやってないって…どういうことなんだ?」

 意外にも彼は僕の答えを笑ったりしなかった。



 「僕は…はめられたんだ。」

 「はめられた?じゃあ、冤罪だっていうのか?」

 僕は頷いた。



 「本当にやってないのか?」

 「あぁ…僕は何もやってない。
ある男の陰謀で、殺人の濡れ衣を着せられたんだ。」

 「そりゃあ、ひでぇ話だな。
でも、なんだってそんなことになっちまったんだ?」

 「それは……」



その時、ひさしぶりに彼女の顔を思い出した。
 愛くるしい笑みを浮かべるアンナの顔を…



(アンナ……)



 眠りにつく直前、僕は祈った。
せめて、眠っている間はアンナの夢が見られますように…と。
しかし、何も夢は見なかった。
 覚えていないだけなのかもしれないが、夢の中でもアンナに会えることはなかった。
あれほど深く愛していたのに…


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