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「おいしいかい?」

赤い舌を忙しなく動かしながらミルクを飲む黒猫に、アンソニーは優しく声をかけた。




「どこも怪我はしてないようだね。
それは良かったけれど、どうしよう…
君は誰かの飼い猫なんだろうか?それとも町の野良猫?
……どうする?しばらくここにいるかい?」




「……それは困るね。」

「えっ!?」




突然聞こえて来た声に、アンソニーが振り向くと、美しい女性が長椅子に座っていた。




「あ、あなたは…!」

「驚かせてごめんよ。
その猫を引き取りに来たんだ。」

「猫を…で、でも、一体どこから?」



アンソニーの問いかけに、女性はふふふと笑った。



「私は魔女。
扉や壁をすり抜けることなんて、造作もないことだよ。」

「ま、魔女…!!」

「ライアン、おいで!
あんたが急に逃げ出すから、危ない所だったじゃないか。」

黒猫は甘えたような声で一鳴きし、魔女の足元にすり寄った。




「助けてくれて本当にありがとうよ。
あんたにはなにかお礼をしなくちゃならないね。」

「いえ…お礼なんて…」

「そうはいかないよ。
こう見えても私は義理堅い魔女なんだから。
あんたは怪我までしてこの子を助けてくれた。
この子の命の恩人なんだからね。
何が良い?お金かい?
それとも…」

 魔女は、意味ありげな笑みを浮かべ、アンソニーに返事を要求した。
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