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006剣の誓いと約束
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(もうだめだ!!)
私は、覚悟を決め、すぐにでも襲って来るであろう最期の瞬間に備えた。
出来ることなら長く苦しむことなく逝けるようにと願い、固く目を閉じる。
次の瞬間、身の毛のよだつような雄叫びが私の耳をつんざいた。
私という獲物を目の前にして、魔物が勝利の勝鬨を上げているのだ。
(どうか、早く終わってくれ…!)
恐怖で気が狂いそうだった。
きっとほんの束の間のことだったのだろうが、私にはそれがとても長い時間のように思えた。
これ以上、待たされたら本当にどうにかなってしまう…そう思った時、何か大きなものが倒れる音がして、私の上に生温かいものが降り注いだ。
「ジェラーーール!」
名を呼ばれ、反射的に私は目を開いた。
「あっ!!」
私のすぐ後ろには、血の滴る長剣を携えた体格の良い男が立ち尽し、その男の前には黒く大きな塊が倒れていた。
「危ない所だったな。」
不精髭をたくわえた男が、そう言って私の方に微笑みかける。
「え……」
私がゆっくりと身体を起こしていると、クリスタルが駆け付け、私に手を差し伸べてくれた。
「ジェラール…無事で良かった!
この方のおかげですね。
本当にどうもありがとうございました。」
クリスタルは、男に向き直り礼の言葉を口にした。
そうか…私は、魔物にやられる寸前でこの男に助けられたのか…
ようやく事態が飲みこめた私は、クリスタルと同じように男に礼を述べた。
「本当にありがとう。
君が来てくれなかったら、私は間違いなくこの魔物にやられてた…」
「だろうな。
後少し遅かったら、今頃あんたはこいつの腹ん中だっただろうな。」
彼は冗談のつもりだったのだろうが、私はとても笑える気分ではなかった。
今もまだ身体の震えが止まらない。
私を追いかけて来た魔物も見る気になれず、私は目を逸らしたが、クリスタルは絶命した魔物の傍に近寄り、物珍しそうに見まわしている。
「すごい。
こいつは急所を一突きにされている!
ものすごい血だ…」
「下手に手負いにしたらそれこそ手が付けられなくなるからな。」
「それにしても、あの状況でこんなに見事に仕留めるなんて…
並みの剣士に出来ることじゃありませんね。」
剣士はクリスタルの誉め言葉に、自慢げな笑みを浮かべた。
私は、覚悟を決め、すぐにでも襲って来るであろう最期の瞬間に備えた。
出来ることなら長く苦しむことなく逝けるようにと願い、固く目を閉じる。
次の瞬間、身の毛のよだつような雄叫びが私の耳をつんざいた。
私という獲物を目の前にして、魔物が勝利の勝鬨を上げているのだ。
(どうか、早く終わってくれ…!)
恐怖で気が狂いそうだった。
きっとほんの束の間のことだったのだろうが、私にはそれがとても長い時間のように思えた。
これ以上、待たされたら本当にどうにかなってしまう…そう思った時、何か大きなものが倒れる音がして、私の上に生温かいものが降り注いだ。
「ジェラーーール!」
名を呼ばれ、反射的に私は目を開いた。
「あっ!!」
私のすぐ後ろには、血の滴る長剣を携えた体格の良い男が立ち尽し、その男の前には黒く大きな塊が倒れていた。
「危ない所だったな。」
不精髭をたくわえた男が、そう言って私の方に微笑みかける。
「え……」
私がゆっくりと身体を起こしていると、クリスタルが駆け付け、私に手を差し伸べてくれた。
「ジェラール…無事で良かった!
この方のおかげですね。
本当にどうもありがとうございました。」
クリスタルは、男に向き直り礼の言葉を口にした。
そうか…私は、魔物にやられる寸前でこの男に助けられたのか…
ようやく事態が飲みこめた私は、クリスタルと同じように男に礼を述べた。
「本当にありがとう。
君が来てくれなかったら、私は間違いなくこの魔物にやられてた…」
「だろうな。
後少し遅かったら、今頃あんたはこいつの腹ん中だっただろうな。」
彼は冗談のつもりだったのだろうが、私はとても笑える気分ではなかった。
今もまだ身体の震えが止まらない。
私を追いかけて来た魔物も見る気になれず、私は目を逸らしたが、クリスタルは絶命した魔物の傍に近寄り、物珍しそうに見まわしている。
「すごい。
こいつは急所を一突きにされている!
ものすごい血だ…」
「下手に手負いにしたらそれこそ手が付けられなくなるからな。」
「それにしても、あの状況でこんなに見事に仕留めるなんて…
並みの剣士に出来ることじゃありませんね。」
剣士はクリスタルの誉め言葉に、自慢げな笑みを浮かべた。
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