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005聖職者の祈り
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「もっと簡単に開くのかと思ってましたが、やはりけっこうかかりましたね。」
「……クリスタル、どういうことなんだ?
君は、この山に穴を開けるために祈っていたのか?」
「あなたは先程言われたじゃないですか。
ここは気に入っていないと。
だから、先に進むために穴を開けたのです。」
クリスタルは無邪気な笑みを浮かべながら、そう答えた。
「そんなことをしなくとも、山を迂回して行けば良かったのに…」
この世界には山の他にはあの小さな水溜りがあるだけなのだ。
山の向こう側へ行きたいなら、多少遠回りにはなるにせよ迂回して行けば良いだけのことなのに、わざわざ穴を開ける意味が私にはわからなかった。
「それが……あ!」
その時、唐突に空が暗くなり、一瞬にして太陽が月に変わった。
影は月と太陽のことを改善すると言っていたが、おそらく一定の時間ごとに切り換えることを思い付いたのだろう。
もしくは本来の月と太陽の性質をわかってはいても、なんらかの理由でそう出来ないのかもしれない。
空に浮かんでいるのはあの時と同じ丸い月だ。
影にとって「月」は満月でしかないのだろう。
そのことが妙におかしく、私は思わず失笑する。
「暗くなってしまいましたね。
まぁ、月が出てるから真っ暗という程ではありませんが…」
「心配することはない。
きっと、そこらにランプがあるはずだ。」
そう言った途端に、私の目の端に赤いものが映った。
それはご丁寧に、もう火が灯された状態のランプだった。
またしても、私の頬は緩んだ。
それを拾い上げ、私とクリスタルは山の中のトンネルに踏み込み、向こう側を目指して歩き始めた。
トンネルを見上げると、水晶越しにぼんやりとして少し歪んだ月が見える。
崩れて来やしないかと何度も上を見上げてはびくつく私とは違い、クリスタルは何かを確信したような自信に満ちた顔つきで歩いて行く。
「もしかしたら君は、この先を出て、そこからどこに行くかを決めているのか?」
「いいえ。
僕は決めてませんが、きっともう決まっているのだと思います。」
それは影を思い出すものの言い方だった。
つまり、まともな答えは期待出来ないということだ。
「なるほど……」
私はそれ以上話すのはやめ、ただまっすぐ前だけを向いて歩き続けた。
「……クリスタル、どういうことなんだ?
君は、この山に穴を開けるために祈っていたのか?」
「あなたは先程言われたじゃないですか。
ここは気に入っていないと。
だから、先に進むために穴を開けたのです。」
クリスタルは無邪気な笑みを浮かべながら、そう答えた。
「そんなことをしなくとも、山を迂回して行けば良かったのに…」
この世界には山の他にはあの小さな水溜りがあるだけなのだ。
山の向こう側へ行きたいなら、多少遠回りにはなるにせよ迂回して行けば良いだけのことなのに、わざわざ穴を開ける意味が私にはわからなかった。
「それが……あ!」
その時、唐突に空が暗くなり、一瞬にして太陽が月に変わった。
影は月と太陽のことを改善すると言っていたが、おそらく一定の時間ごとに切り換えることを思い付いたのだろう。
もしくは本来の月と太陽の性質をわかってはいても、なんらかの理由でそう出来ないのかもしれない。
空に浮かんでいるのはあの時と同じ丸い月だ。
影にとって「月」は満月でしかないのだろう。
そのことが妙におかしく、私は思わず失笑する。
「暗くなってしまいましたね。
まぁ、月が出てるから真っ暗という程ではありませんが…」
「心配することはない。
きっと、そこらにランプがあるはずだ。」
そう言った途端に、私の目の端に赤いものが映った。
それはご丁寧に、もう火が灯された状態のランプだった。
またしても、私の頬は緩んだ。
それを拾い上げ、私とクリスタルは山の中のトンネルに踏み込み、向こう側を目指して歩き始めた。
トンネルを見上げると、水晶越しにぼんやりとして少し歪んだ月が見える。
崩れて来やしないかと何度も上を見上げてはびくつく私とは違い、クリスタルは何かを確信したような自信に満ちた顔つきで歩いて行く。
「もしかしたら君は、この先を出て、そこからどこに行くかを決めているのか?」
「いいえ。
僕は決めてませんが、きっともう決まっているのだと思います。」
それは影を思い出すものの言い方だった。
つまり、まともな答えは期待出来ないということだ。
「なるほど……」
私はそれ以上話すのはやめ、ただまっすぐ前だけを向いて歩き続けた。
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