16 / 34
005聖職者の祈り
3
しおりを挟む
「あの……」
「あ…なんだ?」
男は、何か言いたげな顔つきで私の方をじっと見ていた。
「やっぱり脱いだ方が良いと思いますか?
それとも着たままの方が早く乾くでしょうか?」
今後のことか、もしくは影に関する質問かと思いきや、男は余程服のことが気になるのかして、酷く憂鬱な表情で問いかけた。
「……あいつは思ったより頭が悪いんだな。
君には裸で出てこさせて、それから服を着せれば良かったのに…」
「あ……そうですね!
それなら、僕も靴をなくすこともなかったし、こんなずぶ濡れの服を着せられることもなかった。
しかし、靴がないのは困りました。
やっぱり、もう一度潜って探すしかないかなぁ…」
男は、そう言いながら水溜りの方を振り返る。
「いや…そんなことをしなくても、靴だけじゃなく服一式がきっとそのあたりにあるはずだ。」
それはちょっとした実験だった。
今までは心の中で何か願望を考えると、大概のことはその通りに実現した。
だが、影がいなくなってしまったら、そういうこともなくなってしまうのか?
それを確かめたくて…同時に、想いではなく口に出したことではどうなのかということも確かめてみたくて、私はそんなことを言ったのだ。
「本当ですか?
どこにそんなものが……あ…!」
あたりを見渡した男が、突然声を上げた。
男の視線の先には、やはり思った通り、服と靴だけではなく下着と靴下らしきものが揃えてあった。
すぐさま駆け出した男に続き、私も同時に走り出す。
「あなたの言った通りだ。
しかも、これと全く同じ服だ!」
男は、着ていたものをその場に脱ぎ捨て、服を着替え始めた。
上着の下に着るはずの薄手のブラウスで身体を拭き、素肌の上に長い上着を着こんだ。
見るとはなしに見てしまったが、男は身体にもどこにもおかしな所はなく、人間の男性そのものの身体をしていた。
これが、あの水晶のようなものから作られたとは、どう考えても信じられない。
「お待たせしました。
これでもう大丈夫です。
どこへだって行けますよ。」
男は靴の爪先でとんとんと軽く地面に叩き、両手を広げて微笑んだ。
よく見ると、男は端正なだけではなくとても愛嬌のある顔をしている。
誰からも好かれるタイプの男だ。
彼が身に付けたものは足元まである白い修道服のようなものだった。
靴下や靴までが白い。
ここがあの白い世界だったら、埋もれてしまうところだ。
「あ…なんだ?」
男は、何か言いたげな顔つきで私の方をじっと見ていた。
「やっぱり脱いだ方が良いと思いますか?
それとも着たままの方が早く乾くでしょうか?」
今後のことか、もしくは影に関する質問かと思いきや、男は余程服のことが気になるのかして、酷く憂鬱な表情で問いかけた。
「……あいつは思ったより頭が悪いんだな。
君には裸で出てこさせて、それから服を着せれば良かったのに…」
「あ……そうですね!
それなら、僕も靴をなくすこともなかったし、こんなずぶ濡れの服を着せられることもなかった。
しかし、靴がないのは困りました。
やっぱり、もう一度潜って探すしかないかなぁ…」
男は、そう言いながら水溜りの方を振り返る。
「いや…そんなことをしなくても、靴だけじゃなく服一式がきっとそのあたりにあるはずだ。」
それはちょっとした実験だった。
今までは心の中で何か願望を考えると、大概のことはその通りに実現した。
だが、影がいなくなってしまったら、そういうこともなくなってしまうのか?
それを確かめたくて…同時に、想いではなく口に出したことではどうなのかということも確かめてみたくて、私はそんなことを言ったのだ。
「本当ですか?
どこにそんなものが……あ…!」
あたりを見渡した男が、突然声を上げた。
男の視線の先には、やはり思った通り、服と靴だけではなく下着と靴下らしきものが揃えてあった。
すぐさま駆け出した男に続き、私も同時に走り出す。
「あなたの言った通りだ。
しかも、これと全く同じ服だ!」
男は、着ていたものをその場に脱ぎ捨て、服を着替え始めた。
上着の下に着るはずの薄手のブラウスで身体を拭き、素肌の上に長い上着を着こんだ。
見るとはなしに見てしまったが、男は身体にもどこにもおかしな所はなく、人間の男性そのものの身体をしていた。
これが、あの水晶のようなものから作られたとは、どう考えても信じられない。
「お待たせしました。
これでもう大丈夫です。
どこへだって行けますよ。」
男は靴の爪先でとんとんと軽く地面に叩き、両手を広げて微笑んだ。
よく見ると、男は端正なだけではなくとても愛嬌のある顔をしている。
誰からも好かれるタイプの男だ。
彼が身に付けたものは足元まである白い修道服のようなものだった。
靴下や靴までが白い。
ここがあの白い世界だったら、埋もれてしまうところだ。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる