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005聖職者の祈り

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「あの……」

「あ…なんだ?」

男は、何か言いたげな顔つきで私の方をじっと見ていた。



「やっぱり脱いだ方が良いと思いますか?
それとも着たままの方が早く乾くでしょうか?」

今後のことか、もしくは影に関する質問かと思いきや、男は余程服のことが気になるのかして、酷く憂鬱な表情で問いかけた。



「……あいつは思ったより頭が悪いんだな。
君には裸で出てこさせて、それから服を着せれば良かったのに…」

「あ……そうですね!
それなら、僕も靴をなくすこともなかったし、こんなずぶ濡れの服を着せられることもなかった。
しかし、靴がないのは困りました。
やっぱり、もう一度潜って探すしかないかなぁ…」

男は、そう言いながら水溜りの方を振り返る。



「いや…そんなことをしなくても、靴だけじゃなく服一式がきっとそのあたりにあるはずだ。」

それはちょっとした実験だった。
今までは心の中で何か願望を考えると、大概のことはその通りに実現した。
だが、影がいなくなってしまったら、そういうこともなくなってしまうのか?
それを確かめたくて…同時に、想いではなく口に出したことではどうなのかということも確かめてみたくて、私はそんなことを言ったのだ。



「本当ですか?
どこにそんなものが……あ…!」

あたりを見渡した男が、突然声を上げた。
男の視線の先には、やはり思った通り、服と靴だけではなく下着と靴下らしきものが揃えてあった。
すぐさま駆け出した男に続き、私も同時に走り出す。



「あなたの言った通りだ。
しかも、これと全く同じ服だ!」

男は、着ていたものをその場に脱ぎ捨て、服を着替え始めた。
上着の下に着るはずの薄手のブラウスで身体を拭き、素肌の上に長い上着を着こんだ。
見るとはなしに見てしまったが、男は身体にもどこにもおかしな所はなく、人間の男性そのものの身体をしていた。
これが、あの水晶のようなものから作られたとは、どう考えても信じられない。



「お待たせしました。
これでもう大丈夫です。
どこへだって行けますよ。」

男は靴の爪先でとんとんと軽く地面に叩き、両手を広げて微笑んだ。
よく見ると、男は端正なだけではなくとても愛嬌のある顔をしている。
誰からも好かれるタイプの男だ。
彼が身に付けたものは足元まである白い修道服のようなものだった。
靴下や靴までが白い。
ここがあの白い世界だったら、埋もれてしまうところだ。
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