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 「美里……どうかしたの?
 美里!」

 「え?は?何か言った?」

 「何かじゃないだろ。
おまえ、30秒くらい固まったまま動かなかったぞ。」

 「か、考え事してたの。
 最近、仕事が忙しくてさぁ…はは…」



ごはんどころじゃないっつーの!
ヒデくんに渡したは良いけど、それからすっごく気になっちゃって……

いつもならうだうだしてから帰るんだけど、またなにかおかしなことしたら怪しまれそうだから、お風呂に入ったらすぐに戻った。




 *



 (あぁぁ…どうしよう…!?)



 一人になると、誰のことも気にしなくて良いせいか、悩みが十倍くらいに膨らんだような気がした。



しっかりしろ!私!
この世には魔女なんていない。
だから、あのおばあさんは魔女じゃない。
つまり、おばあさんがくれたあの木の実は魔法の木の実なんかじゃない。
だから、ヒデくんにチョコをあげても何の心配もない。



 何度も何度も、そんなことを自分に言い聞かせる。



 (うん、これで大丈夫!)



でも、5分も経つと、また心配になってくる。
だって、もしも、あれがおばあさんの言った通り、惚れ薬みたいな効果のある木の実だったとしたら…



頭に浮かぶのは、お揃いのセーターを着て、手を繋いでテーマパークを歩いてる私とヒデくん……



「わーーーっ!」



 自分のおばかな妄想に顔が熱くなる。




 今時ペアルックなんて、ないってば!
でも……妄想の私とヒデくんは、顔を見合わせてすっごく幸せそうに笑ってて……



もしも、本当にヒデくんとつきあうようなことになったら、毎日がどんなに楽しいだろう。
みんな、羨ましがるだろうなぁ…
そうだ…奈津美とダブルデートしよう!
 奈津美…ヒデくんを見たら驚くだろうなぁ。



そんなことを考えると、なんだかすっごくわくわくして自然と笑みがこぼれた。
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