上 下
1 / 23

しおりを挟む
暗い…暗いよ……
それに寒いし…誰もいないよ…
何にもない…たんぼや畑以外に何もないよ……



「ここ、どこなのよーーーー!」



ツイてない…
多分、今日は私が今まで生きてきた中でも特別にツイてない日だ。



まず……私は本来ここにいるはずじゃなかった。
本当なら、景色の良い露天風呂付きの温泉にいて、今頃はご馳走食べておいしい地酒でも飲みながら温泉に浸かって、この世の天国を感じてるはずだった。



ところが、今、私がいるのはどこだかよくわからない、田んぼのど真ん中。
 誰もいない真っ暗な…
こんなことになったのは、全部奈津美のせいなんだ!



この連休に二人で旅行に行こうって話になって……
半年近く前からパンフレットを集めたりネットで検索しまくって、どこよりも安くてサービスが良くて、楽しめそうな旅行のプランを考え、すべてを私がセッティングした。
奈津美はそういうことがあんまり得意じゃないし、パソコンも持ってないから。
頑張った甲斐があって、かなり満足出来る予定が組めて、私はこの日が来るのをどれほど楽しみにしていたことか。



と・こ・ろ・が……



そんな最中、考えてもみないことが起きたんだ。



「奈津美…今、なんて言ったの?」

「だから~…美里の分の予約を彼に譲ってほしいの…
一生のお願い!」

「はぁ?」



一緒のお願いって…なんて昭和臭い頼み方なんだろう。

つまり…奈津美に彼氏が出来て、その人と旅行に行きたいから私の分の予約を彼に譲ってほしいってことだたったんだけど…

普通、言えるか?そんなこと…
旅行のプランは私が立てて、宿を押さえたり、乗り物の手配をしたのももちろん私で…
すっごく楽しみにしてたし、着ていく服だって買ったし……
あれこれ考えるとマジで泣きそう。



あぁ、女の友情は紙より薄いっていうのは本当だ。



職場の同僚にも旅行に行くって言いふらしたし、ブログや呟きにも書いたよ。



それなのに……!



寂しさ、悔しさ、怒り、悲しみ……
いろんな感情がごちゃごちゃになって、私はついにブチ切れた。



「わかったわよ!好きにすれば!?」

しおりを挟む

処理中です...