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鏡の中と外

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「そうか…彼は魔物…
そりゃあもっともな話だね。
 鏡の中に棲んでる者が、まともな人間であるはずがない。」

 「でも、君は……」

 「僕だって同じようなものさ。
 一応は人間かもしれないけど、まともじゃないもの……」

 「そんなことを言うのは止すんだ!
 君はまともな人間だ!
 魔物なんかと一緒にするな!」

 珍しく感情的な声をあげたスコットに、アラステアは黙り込んだ。




 「……ありがとう、スコット……」

 「れ、礼なんか言われるようなことは言ってない。
 僕はただ……」

 「スコット、それであの鏡は…?」

 照れくささを隠すように、アラステアは平静を装い、さっと話題を変えた。



 「あ、あぁ、これはね。
なんでも、その鏡は元は同じものが二枚……」

そう言って壁の鏡を見たスコットの言葉が途絶えた。



 「スコット…どうかしたの?」

 「み、見える…!」

 「見えるって何が?」

 「鏡の中に君がいる…!」

 「……僕が…?」

アラステアはまだどこか信じていないような声でそう言った。




 「そうだよ、君が映ってる!
 君は、薄紫色のガウンを羽織って床に座り込んで…」

 「ほ、本当に見えてるの?」

 「本当だって!」

 「でも、なぜ……」

 「あ…さっきの話の続きだけどね。
 鏡は元は同じものが二枚あったらしいんだ。
その一枚は、割れたかひびが入ったかしてだめになって、元が良い鏡だけに、そのまま捨てるのはもったいないってことで、何枚かを加工して作ったらしい。
これは、その鏡だってことだったよ。」

 「……そう……じゃ、その鏡のおかげで君と話せるようになって、僕の姿も見えるようになったってことなんだね。
きっと特別なものなんだろう。
 彼は…レオナールはその鏡を見て、ひどく動揺していた。
 彼は、何かを知ってるんだろうね。」

スコットは、遠いエクトルの屋敷を訪ねたことが無駄ではなかったと、心を熱くした。

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