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鏡の中と外
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*
「ジョセフ…この騒ぎは一体どういう事なんだ?」
「スコット様…誰かからアラステア様の失踪のことが漏れたのです。
皆様、この家の跡を継ぐのはご自分だと言われて……」
(いつもはアラステアに手紙さえ送らないくせに…
こんなことになったら、皆で押しかけて……
しかも、アラステアはまだ死んだと決まったわけじゃない。
それなのに……)
スコットは激しい憤りに叫び出してしまいそうになるのを懸命に堪えた。
「金の亡者め…皆、出ていけ!」
そう叫びたい気持ちを必死に堪え、スコットは、若い使用人を連れて、地下のあの部屋へ向かった。
*
「うん、そうだね。
そこで良い。
ありがとう。もう戻って良いよ。」
スコットは、エクトルからもらってきた鏡を、地下のあの部屋に掛けさせた。
大きな鏡の向かい側…
エクトルの控えの間にあった時はけっこう大きいように見えたものだが、あの鏡と比べると、随分と貧弱に見える。
しばらく鏡をみつめていたスコットは、やがてその場に座り込む。
「アラステア…僕は馬鹿だ。
どうしようもない程の大馬鹿者だよ。
こんなものをもらって来て、何をしようと思ってたんだろう…」
スコットは、両手で頭を抱え、俯いた。
「ごめんよ、アラステア…
僕にはどうすれば良いのかわからない。
君をみつけたいのに、何をどうすれば良いのか、まるでわからないんだ。
許してくれ、アラステア……こんなふがいない僕をどうか許して……」
スコットはそう言うと、静かに涙を流し始めた。
スコットの頭の中に、アラステアの最後の言葉が流れた。
『……ありがとう。僕は君が大好きだよ。』
(彼はあんなことを言う人じゃない。
それに、酷く思いつめた顔をしていた。
彼の様子がおかしいことをもっと重く受け止めるべきだったんだ。)
「アラステアー!」
「…ット……スコット……」
不意に耳をかすめた小さな声に、スコットはふと顔を上げ、あたりを見渡した。
しかし、部屋には誰もいない……
「ジョセフ…この騒ぎは一体どういう事なんだ?」
「スコット様…誰かからアラステア様の失踪のことが漏れたのです。
皆様、この家の跡を継ぐのはご自分だと言われて……」
(いつもはアラステアに手紙さえ送らないくせに…
こんなことになったら、皆で押しかけて……
しかも、アラステアはまだ死んだと決まったわけじゃない。
それなのに……)
スコットは激しい憤りに叫び出してしまいそうになるのを懸命に堪えた。
「金の亡者め…皆、出ていけ!」
そう叫びたい気持ちを必死に堪え、スコットは、若い使用人を連れて、地下のあの部屋へ向かった。
*
「うん、そうだね。
そこで良い。
ありがとう。もう戻って良いよ。」
スコットは、エクトルからもらってきた鏡を、地下のあの部屋に掛けさせた。
大きな鏡の向かい側…
エクトルの控えの間にあった時はけっこう大きいように見えたものだが、あの鏡と比べると、随分と貧弱に見える。
しばらく鏡をみつめていたスコットは、やがてその場に座り込む。
「アラステア…僕は馬鹿だ。
どうしようもない程の大馬鹿者だよ。
こんなものをもらって来て、何をしようと思ってたんだろう…」
スコットは、両手で頭を抱え、俯いた。
「ごめんよ、アラステア…
僕にはどうすれば良いのかわからない。
君をみつけたいのに、何をどうすれば良いのか、まるでわからないんだ。
許してくれ、アラステア……こんなふがいない僕をどうか許して……」
スコットはそう言うと、静かに涙を流し始めた。
スコットの頭の中に、アラステアの最後の言葉が流れた。
『……ありがとう。僕は君が大好きだよ。』
(彼はあんなことを言う人じゃない。
それに、酷く思いつめた顔をしていた。
彼の様子がおかしいことをもっと重く受け止めるべきだったんだ。)
「アラステアー!」
「…ット……スコット……」
不意に耳をかすめた小さな声に、スコットはふと顔を上げ、あたりを見渡した。
しかし、部屋には誰もいない……
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