地下の初恋

side アラステア

３

＊




「相変わらず、見事な薔薇だね。」

その言葉が上辺だけのものじゃないことは、彼の目を見ればすぐにわかる。
スコットは子供の頃から、動物や植物を愛する優しい人だった。
そんな彼だからこそ、僕みたいな嫌われ者とも付き合ってくれるんだろう。



「ハンスが毎日頑張ってくれてるからね。」

薔薇のことを褒められてとても嬉しい気持ちを悟られまいと、僕はそんな風に素っ気なく答えた。



「最近、体調はどうだい？
この前より、元気そうに見えるけど……」

「……そうかな？」

彼は、僕の小さな変化にもすぐに気付く。
ただ、それは体調というのとは少し違うけれど、でも、気分が浮かれてるせいか、確かに体調もいつもより悪くはない。




薔薇の甘い香りが、僕に勇気を与えてくれる。

今日こそ、話そう……
あのことを……



そう決意して口を開こうとした時、ほんのわずかに早くスコットが声を発した。




「なにか良いことでもあったのかい？」

そのタイミングの悪さに、僕はなんだかおかしくなって笑ってしまった。




「え……一体、どんなことがあったんだい？
聞かせておくれよ。」

なんだ…さっきのは適当に言っただけだったの？
彼のどこか戸惑ったような顔が、緊張していた僕の心をさらに優しくほぐしてくれた。