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「アルバ…!」

 騒ぎを聞きつけ出て来たのは、アルバの父親・ジョナサンでした。



 二人はアルバの帰還をたいそう喜び、アルバも二人の無事を心から喜びました。



 「しかし、アルバ…おまえ、今までどこにいたんだ?
それに…あの頃と少しも変わっていない…」

 「じ、実はね…
イルマさんのところに、ある日魔女がやって来て…
私、その魔女の機嫌を損ねて、そのせいで、ぬ、沼の精霊にされてしまったの…」

アルバはイルマをかばうため、両親に嘘を吐きました。



 「な、なんだって!沼の精霊に…!?」

 二人は顔を見合わせ、言葉を失いました。



 「そ、そうなの…それで、イルマさんがそのことを知って、つい最近魔女にかけあってくれて…それで、元に戻れたんだけど、年まであの時のままになっちゃって…」

 「そうかい、そんな大変なことが…
おまえがなかなか帰って来ないから、イルマさんの所に何度も行ったんだよ。
でも、イルマさんは知らないって言うし、とても心配してたんだよ。」

 「本当にごめんなさいね…でも、私…精霊にされてから、沼から離れられなくて…」

 「……苦労したんだね。」

 優しいマーサの言葉に、アルバの瞳からは大粒の涙がこぼれました。



 「ええ…薄暗い沼にひとりぼっちにされて…とても寂しくて心細かったわ。」

 「そうだったのか。そんなこと全く知らず…すまなかったな。」

 「ううん、そんなことわかるはずがないもの。
でも、本当に良かった。
こうして元に戻ることが出来て、母さんや父さんにまた会えて…」

 「これもすべてはイルマさんのおかげだね。
 近いうちに、イルマさんにお礼を言いにいかなきゃいけないね。」

 「……そうね。」

 二人に嘘を吐くのは心苦しいことでしたが、本当のことは言えません。
アルバは心の中で二人に謝りながら、嘘を吐き通しました。
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