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「あの…どなたですか?
 僕は君に覚えがないんだけど…」

 「ええ、初対面ですわ。
 私はアルバに会いに来たんです。」

 「ア…アルバに!?」

ダリルはたいそう驚きました。 
だって、アルバの姿は、たいていの人間には見えませんし、アルバがここにいることだって、誰も知らないはずなのですから。 



 「そ、そんな者はうちにはいない!」

ダリルは、アルバをかばうために嘘を吐きました。
デイジーが何をしに来たかはわかりませんでしたが、隠さなくてはならないような気がしたのです。



 「アルバ!」

ですが、ダリルの後を着いてきたアルバは、簡単にみつかってしまいました。



アルバはその赤い髪に見覚えがありました。 



 『まさか…あなた、デイジーなの?』

 「そうよ!あなたはアルバなのね!」

デイジーにはアルバの姿が見えました。
その声もはっきりと聞こえたのです。
デイジーははアルバを抱き締めようとしましたが、その腕はアルバの体をすり抜けました。



 『ごめんなさい。今の私は人間みたいな実体がないから。
それにしても、あなた…とても大きくなったのね…』

あの小さかったデイジーが、いまや立派な大人の女性になっていたのです。
アルバは、時の流れをあらためて実感しました。
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