沼地の精霊

１６

その日の夜遅く…
アーサーは、長い階段をひたすら上って行きました。
 国王と軍隊がローランド王国に攻め込む前に、自分がなんとかしなくてはならないと考えたのです。
お互いが深い傷を負わないように、平和に解決出来る策がないかと考えましたが、アーサーには何も思い付きませんでした。
でも、ローランド王国の国王ならば、なんらかの手立てを考えてくれるかもしれません。
そのことを信じて、アーサーは休むことも忘れ、階段を上り続けました。
ディモスが地上に続く道を掘ってしまう前に、なんとかしなければならないのです。



 ＊＊＊



 「これが地上…これが空というものなのか……」



 空を見上げたアーサーは、その青さと明るさに感動して声を震わせました。
 国王は若い頃に一度だけ、地上に出たことがあると言っていました。
 青く高い空を見て、国王が地上に住みたいと思う気持ちがアーサーにもなんとなくわかったような気がしました。
ですが、だからといって、戦いによって領地を奪うなんて、してはいけないことです。
それに、フォモールという国を護っていく責任もあると思うのでした。



 （すべては僕にかかっている。
なんとかしなくては…！）



 一際高い塔が連なっているため、お城の場所はすぐにわかりました。
アーサーはお城を目指して駆け出しました。