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 「さぁ、皆!頼んだぞ!」



それから何日かして、沼地に数人の男達が現れました。
どこからか運んで来た土で、男達は沼地を埋め始めました。



それは、ローランド王の御達しでした。
 娘のエメットを溺愛しているローランド王は、エメットが沼地で溺れかけたことを知り、沼地を埋めてしまうように、農民達に言いつけたのです。
 毎日、入れ替わり立ち代わり、男達がやって来ては、沼地を埋めていきます。
 沼地が埋め尽くされてしまったら、沼地の精霊であるアルバは生きてはいけません。
アルバは、毎日、男達のすぐ傍に行って懇願しました。
 沼地を埋めないでくれと…
ですが、アルバの声は誰の耳にも届きません。



 (私は死んでしまうのね…)



アルバは、ほんのわずかに残った沼地で、悲しみの涙を流しました。
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