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「そんなに走ったら……ああっ!ジョアン!」
マリオンは、大きな声を上げて立ち上がりました。
「大丈夫だって。
母さんは本当に心配症なんだから……」
二人の見守る中、転んだ小さな女の子は、何事もなかったかのように立ち上がり、小さな手で膝の土を払いました。
ぬかるんだ土で彼女の膝は茶色くなっていましたが、そんなこともさして気にはせず、また元気に走り出しました。
「ほら、ね?」
マリオンの傍らで、ニコールが微笑みます。
「そういえば、あなたもあんなだったわね。
転んでも泣いたことがなかったわ。」
走るジョアンを目で追いながら、マリオンは独り言のように呟きました。
ジョアンは、畑にいるアベルに近付き、何事かを話しています。
「やっぱりここは良いなぁ…
僕も畑仕事をしようかな。」
「何言ってるの。
あなたには子供達がいるでしょう?」
ニコールは肩をすくめ苦笑いを浮かべます。
「確かに、子供達は可愛いけどね…」
二本目の魔法の木から生まれたニコールは、すくすくと育ち、マリオン達の心配をよそに、無事に成人しました。
頭の良かった彼は、学校の先生という職に就き、エリサという女性と結婚し、ジョアンという可愛い女の子に恵まれました。
ニコールは、週末には必ず家族を連れてマリオン達の家に遊びに来ます。
「ねぇ、母さん…来週、ジョアンの誕生日なんだけど……」
「ええ、わかってるわ。
その日は父さんと一緒にあなたの家に行くから。」
「ありがとう、ジョアンも喜ぶよ。
それでね……」
「あら……」
不意にマリオンが空を見上げました。
「そんなに走ったら……ああっ!ジョアン!」
マリオンは、大きな声を上げて立ち上がりました。
「大丈夫だって。
母さんは本当に心配症なんだから……」
二人の見守る中、転んだ小さな女の子は、何事もなかったかのように立ち上がり、小さな手で膝の土を払いました。
ぬかるんだ土で彼女の膝は茶色くなっていましたが、そんなこともさして気にはせず、また元気に走り出しました。
「ほら、ね?」
マリオンの傍らで、ニコールが微笑みます。
「そういえば、あなたもあんなだったわね。
転んでも泣いたことがなかったわ。」
走るジョアンを目で追いながら、マリオンは独り言のように呟きました。
ジョアンは、畑にいるアベルに近付き、何事かを話しています。
「やっぱりここは良いなぁ…
僕も畑仕事をしようかな。」
「何言ってるの。
あなたには子供達がいるでしょう?」
ニコールは肩をすくめ苦笑いを浮かべます。
「確かに、子供達は可愛いけどね…」
二本目の魔法の木から生まれたニコールは、すくすくと育ち、マリオン達の心配をよそに、無事に成人しました。
頭の良かった彼は、学校の先生という職に就き、エリサという女性と結婚し、ジョアンという可愛い女の子に恵まれました。
ニコールは、週末には必ず家族を連れてマリオン達の家に遊びに来ます。
「ねぇ、母さん…来週、ジョアンの誕生日なんだけど……」
「ええ、わかってるわ。
その日は父さんと一緒にあなたの家に行くから。」
「ありがとう、ジョアンも喜ぶよ。
それでね……」
「あら……」
不意にマリオンが空を見上げました。
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