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「あぁ、今日は大変な目に遭った……」

そう言いながら、アベルは長椅子の上に身を投げ出しました。



「ごめんなさいね…でも……」

「良いんだよ。
実は僕もけっこう面白かったし。」

アベルはくすっと笑い、心配そうな顔をしたマリオンの肩を優しく叩きました。



「そういえば、あの本、一体何が書いてあるんだろうね?」

アベルがかばんの中から本を取り出し、マリオンの前に差し出しました。



「『赤ん坊の作り方』…ねぇアベル、どんなことが書いてあると思う?」

アベルは微笑み、マリオンの耳元でなにかを囁きました。



「もうっ!アベル!真面目に答えてよ!」

「僕は真面目だよ。
きっとそういう本だからあんなに安かったんだよ。」

ちょっと怒ったような目でマリオンはアベルを睨み、そしてその本を開きました。



「……あらっ?」

「どうかしたの?……え?」

マリオンの開いた本をのぞき込んだアベルは、大きな声を上げて笑い始めました。
それもそのはず。
 本には何も書かれていなかったのです。
どのページも真っ白です。



「道理で安いはずだよ。」

「……酷いおばあさんね。」

ぱたんと本を閉じたマリオンは、あることを思い出しました。



「そうだわ、アベル!
あのおばあさん、言ってたじゃない。
まず、最初に本の表紙に息を吹きかけるようにって。」

「え…?あぁ、そういえばそんなことを言ってたっけ。
でも、そんなことして、何がどうなるっていうんだい?」

「わからないけど……
でも、言われた通りにしてみましょうよ。」

「う、うん……」



アベルは、表紙に優しく息を吹きかけました。




「何も変わらないよ?」

「そうね…でも……あっ!」

なにげなくページを開いたマリオンは、大きく目を見開きました。
なぜなら、さっきまで何も書かれてなかった本に、文字が書かれていたからです。
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