2 / 30
2
しおりを挟む
「やっぱりお店だわ。」
マリオンがアベルの耳元で囁き、アベルはその言葉に小さく頷きました。
粗末な黒い幌で囲われただけのその店の入口には「魔法屋」とかすれた文字で描かれた看板が出ていました。
「アベル…魔法屋って何なのかしら?」
「占いか何かじゃないかな。
なんだか怪しいし、近寄らない方が……」
「いらっしゃい……」
二人が声をひそめて話し合っている最中、店の中からしわがれた声が響きました。
まさか、話が聞こえているとは考えていなかった二人は驚き、思わず顔を見合わせます。
「どうしましょう?」
「どうって……」
「中の人は私達が来てることに気付いてるのよ。
入らなきゃ申し訳ないわ。」
「でも、こんな得体のしれない店…ものすごく高い見料をふっかけられたらどうするんだ?
今のうちに逃げよう!」
「……でも……」
関わりたくないと考えるアベルとは裏腹に、マリオンはその場を離れようとはしませんでした。
それには理由がありました。
二人は、お金持ちではありませんでしたが、とても仲の良い夫婦で、毎日を幸せに暮らしていました。
ですが、二人には悩みがあったのです。
それは子供が出来ないことでした。
結婚してもう十年も経つのに、二人は子供を授からなかったのです。
特に、マリオンはそのことをたいそう悩んでいました。
「ねぇ…最初に見料がいくらか訊ねましょうよ。
それで高かったら出ましょう。
でも、ほどほどの値段なら……」
「マリオン……君のみてもらいたいことはわかるよ。
でも、そんなこと、占いなんかじゃ……」
「中へどうぞ……」
再び、あのしわがれた声が、店の中から聞こえて来ました。
マリオンは小さく頷き、入口の方へ歩き出しました。
マリオンにはもう何を言っても無駄だと諦めたアベルは、渋い顔でその後に続きました。
マリオンがアベルの耳元で囁き、アベルはその言葉に小さく頷きました。
粗末な黒い幌で囲われただけのその店の入口には「魔法屋」とかすれた文字で描かれた看板が出ていました。
「アベル…魔法屋って何なのかしら?」
「占いか何かじゃないかな。
なんだか怪しいし、近寄らない方が……」
「いらっしゃい……」
二人が声をひそめて話し合っている最中、店の中からしわがれた声が響きました。
まさか、話が聞こえているとは考えていなかった二人は驚き、思わず顔を見合わせます。
「どうしましょう?」
「どうって……」
「中の人は私達が来てることに気付いてるのよ。
入らなきゃ申し訳ないわ。」
「でも、こんな得体のしれない店…ものすごく高い見料をふっかけられたらどうするんだ?
今のうちに逃げよう!」
「……でも……」
関わりたくないと考えるアベルとは裏腹に、マリオンはその場を離れようとはしませんでした。
それには理由がありました。
二人は、お金持ちではありませんでしたが、とても仲の良い夫婦で、毎日を幸せに暮らしていました。
ですが、二人には悩みがあったのです。
それは子供が出来ないことでした。
結婚してもう十年も経つのに、二人は子供を授からなかったのです。
特に、マリオンはそのことをたいそう悩んでいました。
「ねぇ…最初に見料がいくらか訊ねましょうよ。
それで高かったら出ましょう。
でも、ほどほどの値段なら……」
「マリオン……君のみてもらいたいことはわかるよ。
でも、そんなこと、占いなんかじゃ……」
「中へどうぞ……」
再び、あのしわがれた声が、店の中から聞こえて来ました。
マリオンは小さく頷き、入口の方へ歩き出しました。
マリオンにはもう何を言っても無駄だと諦めたアベルは、渋い顔でその後に続きました。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
(完結)お姉様を選んだことを今更後悔しても遅いです!
青空一夏
恋愛
私はブロッサム・ビアス。ビアス候爵家の次女で、私の婚約者はフロイド・ターナー伯爵令息だった。結婚式を一ヶ月後に控え、私は仕上がってきたドレスをお父様達に見せていた。
すると、お母様達は思いがけない言葉を口にする。
「まぁ、素敵! そのドレスはお腹周りをカバーできて良いわね。コーデリアにぴったりよ」
「まだ、コーデリアのお腹は目立たないが、それなら大丈夫だろう」
なぜ、お姉様の名前がでてくるの?
なんと、お姉様は私の婚約者の子供を妊娠していると言い出して、フロイドは私に婚約破棄をつきつけたのだった。
※タグの追加や変更あるかもしれません。
※因果応報的ざまぁのはず。
※作者独自の世界のゆるふわ設定。
※過去作のリメイク版です。過去作品は非公開にしました。
※表紙は作者作成AIイラスト。ブロッサムのイメージイラストです。
【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる