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回想

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「どうしてです?」

 「僕は…ここを離れたらどうなるかわかりません。」

 彼の言わんとすることはすぐにわかった。
 充彦さん達はこの村で、途方もない時を生きている…
現実の世界に行ったら、その年月が身体にどんな変化を及ぼすかしれない。
 充彦さんはきっとそのことを懸念したんだと思った。



 「じゃあ、私も行きません!
 私は、充彦さんとずっと一緒です。
 充彦さんのことを愛しているから…」

 私がそう言うと、充彦さんは私の身体を引き寄せ、強く抱き締めた。
 嬉しいはずの抱擁が、なぜだか私を不安にさせた。



 「わかりました。では一緒に行きましょう。」

 「え?」

それは、あまりにも早い心変わりだった。
 充彦さんは私の手を取り、黒い穴の方へ歩き出した。
なんともいえないいやな胸騒ぎが、私を襲う…
周りは相変わらずすごい風だというのに、穴に近付くごとに、風はやみ音が小さくなるような気がした。



 「充彦さん…大丈夫なのかな?」

 「大丈夫です。きっと、僕の考えは当たっています。」

 「充彦さんの考えって…それじゃあ、この穴は、元の世界に繋がっていると…?」

 充彦さんはゆっくりと頷いた。



 「では…行きましょう。」

そう言って歩み始めた充彦さんが急に立ち止まり、私の腕をぐいと強く引いた。



 「あ…」

その反動で、私は充彦さんの前に投げ出されるような格好になって…
充彦さんは、さらに私の背中を突いた。



 「あ、あぁっ!」

 「春香…愛してます!ずっと!」



 一瞬にして真っ暗になった視界の中で、私は充彦さんのそんな声を聴いた。
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