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回想

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 「少し食べたほうが良いですよ。」




 私の涙はなかなか止まらなかった。
 自分でも呆れるくらいずっと泣いて…
男性はその間中ずっと、何も言わず、ただ、私の傍にいてくれた。
 目を開けるのも大変なくらいに顔がつっぱって…ようやく私の涙が止まった頃、男性は台所に行って、夕食の用意をして戻って来た。



 「さぁ、一口でも良いから食べましょう。
 食べないと元気になれませんよ。」

そんなことを言われても食べる気にはなれなかった。
だけど、せっかく作ってくれたのに申し訳ないと思い、一口だけお味噌汁をすすった。
あまりに泣き過ぎたせいか、味もよくわからない。
 男性も私に遠慮してるのか、ほとんど手をつけなかった。



 「空き家は、明日行きましょう。
 今夜もここに泊まると良いですよ。」

 「ご迷惑をおかけして…申し訳ありません。」

 「そんなことは気にしないでください。
では、布団を…」

 「あ、あの……」

 「なんですか?」

 「こ、ここのことを教えて下さい。」

 私がそう言うと、男性は立ち上がろうとしていた姿勢を戻し、私をじっとみつめた。



 「ここの何が知りたいのですか?」

 「……えっと…ここからは本当に誰も出られないんですか?」

 男性は、ゆっくりと頷いた。
その仕草にまたじわっと涙がこぼれた。



 「どうしてそんなことがわかるんです?」

 涙を拭きながら、私は質問を重ねた。



 「それは、長い年月の間に出られた人が一人もいないからです。」
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