11 / 42
回想
7
しおりを挟む
「あの…実は私……」
「とにかく、中へ…」
「え?あ、ありがとうございます。」
意外にも、その男性は私を家に入れてくれた。
家の中は外とあまり変わらない程度に薄暗かった。
それもそのはず。
照明は、小さなランプだけだったのだから…
テレビやラジオもないのか、家の中は音もなく、しんと静まり返っている。
今の時代に、電気の通っていない村があるなんて信じられないけど、家電のようなものは何もみつからなかった。
玄関を入ってすぐの小さな居間らしき部屋に通された。
丸い卓袱台を中心に、その男性と向かい合わせに座った。
部屋が狭いからなのか、それとも無音のせいなのか、なんだか妙に気まずい雰囲気で、薄暗いことが却って救いとなった。
「あの…私…実は道に迷って…
それで、お電話を貸していただけないかと……」
私がおずおずと話を始めると、男性は悲しそうな顔をして首を振った。
「あの…どういうことでしょうか?」
「ここには電話なんてものはない。」
「え?」
そうだ…考えてみれば、ここは電気も通っていないような村だ。
個人の家に電話がないことは当たり前のことなのかもしれない。
「どこに行けば借りられますか?
役所とか学校でしょうか?」
私が質問を重ねると、男性はまたさっきと同じように首を振った。
「この村のどこにも電話はない。」
「え……?」
がっかりした。
いくらなんでも公共の施設に行けばあるかと思いきや、どこにもないなんて…
「とにかく、中へ…」
「え?あ、ありがとうございます。」
意外にも、その男性は私を家に入れてくれた。
家の中は外とあまり変わらない程度に薄暗かった。
それもそのはず。
照明は、小さなランプだけだったのだから…
テレビやラジオもないのか、家の中は音もなく、しんと静まり返っている。
今の時代に、電気の通っていない村があるなんて信じられないけど、家電のようなものは何もみつからなかった。
玄関を入ってすぐの小さな居間らしき部屋に通された。
丸い卓袱台を中心に、その男性と向かい合わせに座った。
部屋が狭いからなのか、それとも無音のせいなのか、なんだか妙に気まずい雰囲気で、薄暗いことが却って救いとなった。
「あの…私…実は道に迷って…
それで、お電話を貸していただけないかと……」
私がおずおずと話を始めると、男性は悲しそうな顔をして首を振った。
「あの…どういうことでしょうか?」
「ここには電話なんてものはない。」
「え?」
そうだ…考えてみれば、ここは電気も通っていないような村だ。
個人の家に電話がないことは当たり前のことなのかもしれない。
「どこに行けば借りられますか?
役所とか学校でしょうか?」
私が質問を重ねると、男性はまたさっきと同じように首を振った。
「この村のどこにも電話はない。」
「え……?」
がっかりした。
いくらなんでも公共の施設に行けばあるかと思いきや、どこにもないなんて…
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる