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「ところで神様…もうずいぶん遅くなりましたし、そろそろ戻りませんか?」

 「いやじゃ、わしはまだ山ガールを見ていたい。」

 「またそのようなことを……」



 夜は特に都会にとっては最も危険な時間です。
いつ、神様のお力が必要になるかもしれません。



 「そうだ、神様!
 帰りは電車に乗って帰りませんか?
 今の時間なら乗っているものも少なくて貸しきりみたいですよ、きっと。
 人間のふりをして、切符も買って乗りましょう!
 時間がかかりますからお菓子やジュースも買いましょうね!
 乗るのは先頭車両が良いですね!
そしたら、まるで自分が運転手になったような気分になって楽しいですよ。」

 「電車の旅か…ちょっと面白そうじゃの…」

 神様がその気になった所で私は神様の御手を掴んで、駅に飛びました。
なんせコロコロとすぐに気の変わられるお方ですから、チャンスを逃しては大変なのです。
 本来ならば一瞬で戻れる所を、何時間もかけて戻るのは馬鹿馬鹿しいことですが、こうでもしなければ神様はきっと山ガールの宴が終わるまでお戻りにはなられないでしょうから…



「さ、電車が来ましたよ。」



 私はごく一般的な人間の老人と若者に姿を変え、電車に乗りこみました。
 切符を買ったり、売店でお菓子を選ぶのも神様にお任せした所、電車に乗る前から神様はとてもご機嫌で、山ガール達のことはすっかりお忘れになったようでした。
 車内は思った通り、人影もまばらで、私達は先頭車両に乗りこみそこからの風景を楽しみました。
すでに暗いこともあり、特に面白いという程ではなかったのですが、それでも神様は久し振りの電車がお気に召した様子です。
お菓子を食べたり他愛ないおしゃべりをしているうちに、次第に神様の口数が少なくなり…



(神様……)



 多少皺は多いものの、まるで無邪気な子供のような顔をして、神様はすやすやと眠っていらっしゃいました。
いろいろと困った所のあるお方ですが、癒し度満点の寝顔に、私の頬も自然に緩みます。
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