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(ん)意味不明なおまけ

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『ん』



それは、僕の名前だ。
その名前のせいで、僕は子供の頃からいじめられた。
 『ん』なんて名前なだけでもいじめの標的になりやすいのに、僕の場合はそれだけじゃなかったんだ。



 「名前のないいーじまん!」



クラスメイトが節をつけて合唱する。
 悔しいけど、彼らの言う事は本当だ。
だって、僕の名前を漢字で書くと、『井伊次饅』
 僕の名前『ん』は、漢字で書かれた場合には見当たらない。



 「どうして、こんな名前を付けたのさ!」



 僕はそう言って、何度両親を責めたことだろう。
そんな時、二人は哀しい顔をして曖昧に微笑むだけだった。



 大きくなるに連れ、僕は二人を責めるのをやめた。
だって…両親も同じ目にあったに違いないって気付いたから。



 父さんの名前は『き』
 母さんの名前は『ゆ』
 『井伊次槙』と『井伊次繭』なんだ。
ちなみに、母さんの旧姓は知らない。



 僕は名前のコンプレックスからだんだんと暗くひねくれた性格に変わっていった。



どうせ、僕の名前は『ん』なんだ。
 漢字で書いたら、その名前すら隠れてしまうんだ。
そんな奴が幸せになれるわけなんかない。
 僕は自分の殻に閉じ籠り、鬱々とした日々を過ごしていた。



そんなある日、僕は変わった人と出会った。
 僕が大学に入った頃、偶然知り合ったその人は、とても大学生には見えなかった。



 「実は私、三十五浪してるから。」

 僕にはそれが本当なのか冗談なのか良くわからなかった。



 「私、Y〇ここあっていうの。
ホニャララ人よ。」

 「ぼ、僕は…」

 言いたくなかった。
でも、ここあさんにだけ名乗らせるのはやはり心苦しい。



 僕は、メモに『井伊次饅』と書いた。

 「いいじまんって読むの?下の名前はどれ?」

 「下の名前は『ん』ですが、文字は名字の中に含まれているんです。全部書いて、初めて姓名となるのです。」

 「えっ!?」



ほら、引いた…



そう思った時…



「カッコ良いね!」

 「え…?」

 「オリジナリティ、半端ないじゃん!」

その言葉で僕の人生は変わった。
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