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(わ)わたぼこり

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(ねむ…)



ある暖かな日の昼下がり、俺は、公園のベンチでぼーっとしていた。 



バイトをクビになり、彼女の浮気が発覚し、そのショックで俺は半分気が抜けたみたいになっていた。



そんな俺の目の前に、そいつは唐突に現れた。 



 白くて小さくてふわふわしたものが、空を泳ぐみたいに動いて、俺の所に飛んできたんだ。 



 (ん~…………えっ!ま、まさか…!)



 俺の脳裏に過去の記憶がよみがえる。 



そうだ!テレビで見たことあるぞ!
これは、あれだ!みつけたら幸せになるっていうあの…なんだっけ?長ったらしい名前の…… 
そう!ケサランパサランだ! 



 俺は、そいつをつまみあげ、逃げられないように両手で檻のように囲って、家に戻った。 



 玄関に散らかっている靴を踏み、中へ入る。 
 面倒臭がりが年々悪化し、俺の部屋はいわゆるゴミ屋敷状態になっている。
 片付けなくちゃと思うのだけど、ここまで汚くなってしまうと、どこから手を付ければ良いのかさえわからない。



それはともかく、何か、このケサランパサランを入れておく箱はないかと、俺はあたりを見回す。 



 (あ、あれ…)



たんすの上に手頃な箱があったけど、微妙に手が届かない。 



 俺は、弾みを付けて腕を伸ばした。 



 「あっ!」 



その拍子に足がよろめき、俺はその場に倒れた。 
 倒れたと同時に大量のほこりが生き物のように宙を舞う。



 (あ~…痛…ん?
あ、あれっ!?)



ケサランパサランは、俺の部屋のわたぼこりとがらくたに紛れてわからなくなった。



 (あぁ、俺の幸せが…)


 深い溜め息を吐いたら、またほこりが舞いあがった。
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