上 下
42 / 50

(よ)横笛

しおりを挟む
(月のない夜は好きよ…星々の煌めきがいつもより良く見えるから…)



バルコニーに立ち、夜空を見上げるマイヤの耳に、風に乗った美しい調べが届きました。 



 (綺麗な笛の音…誰が吹いているのかしら?)



マイヤは、あたりを見渡しましたが、奏者の姿をみつけることは出来ませんでした。 



マイヤは、美しい音色にうっとりと聞き入りました。 



それからも、決まって新月の晩になると
笛の音が聞こえました。
マイヤはそのうちに笛を吹く者のことがたまらなく気になり、ある夜、城を抜け出し、笛の音を辿って行きました。 



 笛の音は城下町へと続く森の中から聞こえました。 



マイヤは遂に音色の主をみつけました。 
 岩に腰掛け、横笛を吹いていたのは、醜いせむしの青年でした。 
マイヤはちょっぴりびっくりしましたが、いつも笛の音に癒されている事を伝え、青年に名前を訊ねました。
ところが、青年は記憶を失い、自分の名前さえ知りませんでした。
 青年は自分の容姿が醜いため、真っ暗な新月にのみ、笛を吹きに来ていると言いました。



それからも、新月の度に、マイヤは城を抜け出し、青年の演奏を聞き、他愛ないおしゃべりをしました。 
それはマイヤにとって、とても楽しい時間でした。



 「私、あなたのことが好きです。」

マイヤがそう言うと、彼は急に頭を押え込んで呻きました。 
そして、彼の背中のこぶがだんだんと小さくなって行き、背が伸びていったのです。



 「あ、その顔は…!」

 青年が顔を上げると、今までとは別人の端正な顔に変わっていました。



 「思い出した。私はランダシアの王子・レイトです。
 悪い魔女を討伐しようとして、反対に呪いをかけられたのです。
きっと、あなたが醜い私を好きだとおっしゃって下さったことで、呪いが解けたのでしょう。」

 「レイト王子…」



やがて、レイト王子は故郷に戻り、二人はめでたく結婚し、幸せに暮らしました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

処理中です...