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(つ)月を見る猫
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「全く…あんたのご主人様はどこに行っちゃったんだろうね?」
艶々した漆黒の毛を私は優しく撫でた。
フランツがいなくなって、早くも一年の時が流れていた。
彼は、書き置きひとつ残さずにいなくなってしまったのだ。
でも、私はそんなことくらいでは動じない。
そりゃあ、初めてこんなことがあった時はさすがに慌てたけど…
長いこと一緒に暮らして、彼が時々いなくなること、でも、また必ず帰ってくることがわかってからは、いつものことだと諦めるようになった。
「今度はいつ帰って来るんだろうね?」
フランツの愛猫、ベッツィは私の膝の上で眠っている。
本当にさわり心地が良い。
ベッツィは、私以上にフランツと長い付き合いだ。
「こいつの毛並み、すごく綺麗だろ?
カラスよりもまっ黒だろ?」
そう言ってフランツはベッツィのことを自慢する。
フランツの自慢話はただそれだけだ。
彼は、とても優秀な魔法使いなのに、そのことをひけらかすことはない。
それどころか、魔法を使うことも少ない。
大半の家事は、まるで人間と同じようにやるのだから、本当に酔狂だとしか思えない。
ベッツィが大きなあくびをした。
「ベッツィ…眠いの?」
私がそう言うと、ベッツィはまるで『そんなことない』とでも言うかのように顔を上げた。
その視線の先には、月。
ベッツィは、夜空に浮かぶ丸い月を見ていた。
フランツもどこかでこの月を見ているのだろうか?
私も、ベッツィと同じように、丸い月を見上げた。
艶々した漆黒の毛を私は優しく撫でた。
フランツがいなくなって、早くも一年の時が流れていた。
彼は、書き置きひとつ残さずにいなくなってしまったのだ。
でも、私はそんなことくらいでは動じない。
そりゃあ、初めてこんなことがあった時はさすがに慌てたけど…
長いこと一緒に暮らして、彼が時々いなくなること、でも、また必ず帰ってくることがわかってからは、いつものことだと諦めるようになった。
「今度はいつ帰って来るんだろうね?」
フランツの愛猫、ベッツィは私の膝の上で眠っている。
本当にさわり心地が良い。
ベッツィは、私以上にフランツと長い付き合いだ。
「こいつの毛並み、すごく綺麗だろ?
カラスよりもまっ黒だろ?」
そう言ってフランツはベッツィのことを自慢する。
フランツの自慢話はただそれだけだ。
彼は、とても優秀な魔法使いなのに、そのことをひけらかすことはない。
それどころか、魔法を使うことも少ない。
大半の家事は、まるで人間と同じようにやるのだから、本当に酔狂だとしか思えない。
ベッツィが大きなあくびをした。
「ベッツィ…眠いの?」
私がそう言うと、ベッツィはまるで『そんなことない』とでも言うかのように顔を上げた。
その視線の先には、月。
ベッツィは、夜空に浮かぶ丸い月を見ていた。
フランツもどこかでこの月を見ているのだろうか?
私も、ベッツィと同じように、丸い月を見上げた。
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