ルーズリーフ

（う）ウグイス

「じゃあ、この子のこと、よろしくね。」

 彼女はそう言うと、振り向きもせずに部屋を出ていった。 




 「……頼んだぞ。」



 夫もただそれだけ言って出ていった。 



 部屋に残されたのは、すやすやと眠る赤ん坊と私だけ。



 「あなたのご両親は、本当に勝手な人達よね。」 

 私は赤ん坊を抱き抱えた。 
 目元が夫にとてもよく似ている。



この子は私の夫とその愛人との間に産まれた子供だ。 
 愛人は子供まで産むつもりはなかったと、夫から多額の慰謝料をふんだくると、子供を押し付け去って行った。 



 （我が子が可愛くないのかしら…？）



 迷惑といえば迷惑だけど…
だけど、この子には罪はない。 



 （安心しなさい。私があなたを守るから…）



 赤ん坊は、大人たちの事情など知らず、天使のような寝顔で眠っている。
 私もちょうど少し前に子供を産んだばかり。
 一人育てるのも、二人育てるのも大差はない。



 元々、夫とは好いた腫れたで結ばれた仲じゃない。
 親に言われるままに、嫁いだのだ。
 実家を救うためには、そうするしかなかったから…



だから、夫が誰と浮気をしようと、嫉妬をすることもなかった。
とはいえ、まさかこんなことになるとは思ってなかったけど、特に嫌な想いをしているという程でもない。
 鈍い女で良かったわね。



 （私はウグイス…
産み捨てられたホトトギスの卵を育ててあげる…）



 私の腕の中で眠る赤ん坊は、何も知らずに眠るばかり。