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究極の選択

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「物件自体はすごく良いんですけどね。」

そう言って渡された見取り図を見てみると、部屋は8畳の1ルームで、6畳のロフトまでついている。
バス、トイレは別で、オートロックのマンションの二階で日当たりも良いとのこと。
それでいて、駅からは徒歩5分だ。



(えっ!家賃はこんなに安いのか!)



オンボロアパートと同じくらいの金額だ。
かなり惹かれる。
だけど、問題は事故物件だということだ。



「お客様…どちらになさいますか?」

 俺は、その究極の選択に答えを出さなければならなかった。



 *



 (何も出るなよ…)



結局、俺は事故物件を借りることにした。
近くのコンビニで働くことも決まった。



ただ…夜になると、なんだか酷く心細くなった。



(幽霊なんてものは迷信だ。そんなものはいない。)



目を固く閉じるが、なかなか寝付けない。
ふと、目を開けた時、俺の前には血まみれの女がいた。
俺は、悲鳴を上げて飛び起きた。



「な、なにが目的だ!」

『悔しい!おまえを呪ってやる!』

「何?もしかして、おまえ、誰かに騙されて死んだのか?」

『うるさい!そんなことはおまえに関係ない!』

「関係なくなんてない。
俺も、騙されたんだ!
いいか?俺は、一生懸命貯めた金を全部取られたんだぜ!
俺、昔から都会に憧れてて…家族の反対を押し切ってようやく東京に出て来て、これからやっと働けると思ってたら、それが詐欺だったんだ!」

『……そうなの?』



 怖いはずなのに、鬱憤がたまっていたせいか、俺は幽霊を相手に愚痴をこぼしていた。



 幽霊は、一晩中、俺の愚痴を聞いてくれたばかりか、俺に同情してくれた。



 次の晩は、幽霊の身の上話を聞いた。
やはり、彼女は男に騙されたことが原因で死んでしまったらしい。
 俺達は、お互いのことを毎晩話し合った。
 故郷が意外と近くだということもわかった。
そんなことをやっているうちに、俺達の間にはいつしか友情のようなものが芽生えていた。
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