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「……この石が、音を集める道具?」
「君は目も良くないのか?
これは石ではない。種だ。」
「種?」
「……この種に音を封じ、それを植える。
やがて音の花が咲き、その胞子が森中に広がるんだ。
そうすれば、この森に音がよみがえる…!」
うさぎはうっとりしたような顔でそっと目を閉じた。
きっと、その様子を頭の中に思い浮かべているんだろう。
「ねぇ…その花はどこに咲いてるの?
どんな花なの?
私…見たい!
連れてってよ!」
夢の中だけど…その言葉は私の本心だった。
だって、音の胞子を飛ばす音の花だよ!
誰だって、興味がわくよね!
「残念だが、開花するには長い時がかかる。
まだ咲いたものはないのだが…それでも見てみたいのか?」
「うんうん!」
私が予想外に食いついたからか、うさぎはまんざらでもない顔をして私をみつめる。
「……そうか、そんなに見たいのなら…
見せてやろう。」
「やった!」
私が立ちあがると、うさぎはごく自然に片手を差し伸ばした。
なんだ、こいつ!?
手を繋げっていうのか、それとも…
その意図がよくわからないまま、私はうさぎの手を握る。
ちっちゃくてもさっとした柔らかな毛の感触が気持ち良い。
あ、なんだ、こいつ…肉球がないみたい。
そういえば、犬や猫は飼ったことあるけど、うさぎはないから、こんな風に手を握るのも初めてで…
私に手を握られながら、よちよち歩き、時には跳ねるうさぎ…
声はおっさんみたいだけど……なんだか、すごく和むんですけど~~~!
きっと、私は今とても間の抜けた顔をしているに違いない。
だいたい、正装したうさぎと手を繋いで森の中を歩いてること自体、改めて考えるとすっごく面白くて…
どうか、この夢を目が覚めても覚えていますようにと私は祈った。
他愛ない話を交わしているうちに、私達はやがて拓けた場所に出ていた。
あたりにはクローバーみたいな緑色の草が、まるで緑色のペンキを塗りたくったようにびっしりと生えていて、それはそれで酷く印象的な光景だった。
だけど、その上を歩いても草を踏みしだく音は全く聞こえない。
布擦れの音も、風の音も何も聞こえない。
聞こえるのは、私とうさぎの声だけ。
意識すると、それは確かに薄気味悪くて、目に映る光景さえもどこか作り物のようなおかしな印象を受けてしまう。
「ほら、あそこだ。」
緑の絨毯の片隅に、大きな石で四角く囲まれた花壇らしきものが見えた。
「わぁ~!」
私は思わずうさぎの手を離し、花壇の傍に駆け出していた。
そこに生えていたのは、まだ小さな芽がほとんどだったけど、背丈の伸びた物も数本あり、そのうちの一つに、薄い水色のつぼみがついているのを私はみつけた。
「君は目も良くないのか?
これは石ではない。種だ。」
「種?」
「……この種に音を封じ、それを植える。
やがて音の花が咲き、その胞子が森中に広がるんだ。
そうすれば、この森に音がよみがえる…!」
うさぎはうっとりしたような顔でそっと目を閉じた。
きっと、その様子を頭の中に思い浮かべているんだろう。
「ねぇ…その花はどこに咲いてるの?
どんな花なの?
私…見たい!
連れてってよ!」
夢の中だけど…その言葉は私の本心だった。
だって、音の胞子を飛ばす音の花だよ!
誰だって、興味がわくよね!
「残念だが、開花するには長い時がかかる。
まだ咲いたものはないのだが…それでも見てみたいのか?」
「うんうん!」
私が予想外に食いついたからか、うさぎはまんざらでもない顔をして私をみつめる。
「……そうか、そんなに見たいのなら…
見せてやろう。」
「やった!」
私が立ちあがると、うさぎはごく自然に片手を差し伸ばした。
なんだ、こいつ!?
手を繋げっていうのか、それとも…
その意図がよくわからないまま、私はうさぎの手を握る。
ちっちゃくてもさっとした柔らかな毛の感触が気持ち良い。
あ、なんだ、こいつ…肉球がないみたい。
そういえば、犬や猫は飼ったことあるけど、うさぎはないから、こんな風に手を握るのも初めてで…
私に手を握られながら、よちよち歩き、時には跳ねるうさぎ…
声はおっさんみたいだけど……なんだか、すごく和むんですけど~~~!
きっと、私は今とても間の抜けた顔をしているに違いない。
だいたい、正装したうさぎと手を繋いで森の中を歩いてること自体、改めて考えるとすっごく面白くて…
どうか、この夢を目が覚めても覚えていますようにと私は祈った。
他愛ない話を交わしているうちに、私達はやがて拓けた場所に出ていた。
あたりにはクローバーみたいな緑色の草が、まるで緑色のペンキを塗りたくったようにびっしりと生えていて、それはそれで酷く印象的な光景だった。
だけど、その上を歩いても草を踏みしだく音は全く聞こえない。
布擦れの音も、風の音も何も聞こえない。
聞こえるのは、私とうさぎの声だけ。
意識すると、それは確かに薄気味悪くて、目に映る光景さえもどこか作り物のようなおかしな印象を受けてしまう。
「ほら、あそこだ。」
緑の絨毯の片隅に、大きな石で四角く囲まれた花壇らしきものが見えた。
「わぁ~!」
私は思わずうさぎの手を離し、花壇の傍に駆け出していた。
そこに生えていたのは、まだ小さな芽がほとんどだったけど、背丈の伸びた物も数本あり、そのうちの一つに、薄い水色のつぼみがついているのを私はみつけた。
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