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苦めのコーヒーを飲み、僕は気持ちを落ち着けた。
人を殺したなんてことを自叙伝に書くはずがない。
だとすれば…
思わず、僕は噴き出していた。
そう…きっとこれは、小説のネタなんだ。
あの男は、小説家…いや、きっと小説家を夢見ているのか、趣味で小説を書いているのだろう。
そう思うとさっきの動揺が馬鹿馬鹿しく思えた。
つまらないものだとはいえ、このまま持っているのも気が重い。
きっと彼にとっては大切なものだろうから。
こういうものなら交番に届けることもないだろう。
面倒だけど、今度の土曜日にでも僕はもう一度あの喫茶店に行って、この封筒を預かってもらおうと思った。
あの男の身なりからしても、そう遠くから来た感じはしなかった。
きっと、あの付近に住んでいるのだろうと思えたからだ。
*
(おかしいなぁ…確かこのあたりだと思ったのに…)
僕は、そんなに方向感覚が悪いという方ではない。
営業であちこち回っていることもあり、道を覚えることもそう苦手ではなかったはずだ。
なのに、あの喫茶店がどうしてもみつからない。
あの日の記憶を頼りに、営業先から喫茶店があったと思われる道を辿ったが、どうしてもあの店がみつからない。
僕は、スマホを取り出し、付近の地図を表示した。
(今いるのがここだから…)
地図と照らし合わせてみるものの、やはり付近に喫茶店はない。
(どうなってるんだ?)
どうにも納得がいかず、僕は何人もの人に話を聞き、そこら中を隈なく探したが、結局、あの喫茶店をみつけることは出来なかった。
*
狐につままれたような気分を感じながらも、いつしか月日は流れ、僕は、あの封筒のこと等すっかり忘れてしまっていた。
人を殺したなんてことを自叙伝に書くはずがない。
だとすれば…
思わず、僕は噴き出していた。
そう…きっとこれは、小説のネタなんだ。
あの男は、小説家…いや、きっと小説家を夢見ているのか、趣味で小説を書いているのだろう。
そう思うとさっきの動揺が馬鹿馬鹿しく思えた。
つまらないものだとはいえ、このまま持っているのも気が重い。
きっと彼にとっては大切なものだろうから。
こういうものなら交番に届けることもないだろう。
面倒だけど、今度の土曜日にでも僕はもう一度あの喫茶店に行って、この封筒を預かってもらおうと思った。
あの男の身なりからしても、そう遠くから来た感じはしなかった。
きっと、あの付近に住んでいるのだろうと思えたからだ。
*
(おかしいなぁ…確かこのあたりだと思ったのに…)
僕は、そんなに方向感覚が悪いという方ではない。
営業であちこち回っていることもあり、道を覚えることもそう苦手ではなかったはずだ。
なのに、あの喫茶店がどうしてもみつからない。
あの日の記憶を頼りに、営業先から喫茶店があったと思われる道を辿ったが、どうしてもあの店がみつからない。
僕は、スマホを取り出し、付近の地図を表示した。
(今いるのがここだから…)
地図と照らし合わせてみるものの、やはり付近に喫茶店はない。
(どうなってるんだ?)
どうにも納得がいかず、僕は何人もの人に話を聞き、そこら中を隈なく探したが、結局、あの喫茶店をみつけることは出来なかった。
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狐につままれたような気分を感じながらも、いつしか月日は流れ、僕は、あの封筒のこと等すっかり忘れてしまっていた。
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