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「おまえ……このごろ、家のことほっぽりだしてどこに行ってるんだ?」

 「そんなこと僕の勝手だろ。
 金なら、ちゃんと置いていってるだろ!」

 「あれっぽっちの金で偉そうなことを言うな!
 出ていきたいなら、いつでも出ていって良いんだぞ!」



ひさしぶりに顔を合わせたと思ったら、またこれだ。
 僕はうんざりしながら、父さんの傍を離れた。



 時間はそんなにない。
 僕は、作戦を実行することに決めた。
まず僕は隣町に出掛けた。
 古着屋で、上等な上着とズボンと帽子を買い、そこらへんの女性よりも長くなっていた髪をばっさりと切り、髭を綺麗に剃ってもらった。
ただそれだけのことなのに、まるで別の人間に生まれ変わったようだ。
 鏡に映るその顔は、憎らしいあのダニエルと全く同じものだった。
 僕は作戦の成功を確信した。




 僕は町のはずれで時間を潰し、あたりが暗くなるのを待ち、帽子を目深にかぶりながら別荘の方へ向かった。
 目指すのはダニエルの屋敷ではなく、あの女の屋敷だ。
 屋敷の様子をうかがった。
しばらく待っていると、都合良くあの女が庭に現れた。
この好機を逃してなるものかと、僕は名も知らぬあの女に声をかけた。




 「こんばんは。
 星がとっても綺麗だね。」

 「ま、まぁ、オリヴィエ様!
どうしてこんな所に……!?」

 期待通り、女は僕のことをダニエルと間違えてくれた。



 「前から君と二人っきりで話したいと思ってたんだ。
それで、つい……」

 「ま、まさか…!」

 女は信じられないとでも言いたげな顔をしていたが、僕と出会えたことをとても喜んでいるようだった。



 「本当だよ。君は他の女の子とはまるで違う。
 内面からにじみ出るような優しさや美しさを感じるんだ。」

 「オリヴィエ様……」



 「エリーズ様~!どちらですか~?」

 話し始めて間もなく、僕達の会話を邪魔するかのように、メイドが彼女を呼ぶ声が聞こえた。
だけど、そのおかげで彼女の名前がわかった。



 「あ…エリーズ…
また明日…会えないかな?
 出来れば、もう少し遅い時間が良い。」

 「わ、わかりました。
で、では、明日、屋敷の裏の森で……」
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