上 下
64 / 66
本編 最終部 ~運命の姫君はパーティーにて~

長過ぎた青春

しおりを挟む
「ーーーん?えっと・・・つまり・・・?」

私がお望み通り婚約破棄を申し渡したと言うのに・・・何故か殿下は理解出来ていない様子で眉を顰めながら、慌てた様子だ。
そんな殿下の様子に相変わらず察しが悪いなぁ・・・と思ってしまった私は、二度目は我慢出来ずため息を漏らしてしまった。

「だから・・・私達の婚姻関係を本日を以て終わらせて頂きたいのです。いえ・・・今、この瞬間からでもかまいませんわ!ですから、殿下はとっとと王宮へお戻りなって準備を進めて下さいまし!」



「フローラーーーっ!!!!」

「・・・わ?!」



どうやら、ようやく私の言わんとしている事を理解した様子の殿下は感動の余り私に抱きついて来た。
無理もないであろう・・・。
サイラスという強敵が居たにも関わらず身分を越えて想い人と結ばれただけでは無く・・・
私と婚約破棄をすれば・・・正真正銘、その女性を自分の妻に据え置く事が出来るのだから。
殿下にとっては・・・正に夢の様な展開では無かろうか?

「フローラ・・・ありがとうーーー!すまない、君がそこまで私達の未来の事を考えていてくれているとは思っていなくてーーー」

表情こそ見えないが・・・私の上から零れ落ちてきた滴は恐らく殿下の涙だと思った。
殿方の泣き顔を見るだなんて無粋な真似は出来ないので・・・私は殿下の胸に顔を埋めたまま、背中へと手を回して摩っていた。

「殿下ーーー、これからが本番なのですよ?頑張って下さい。私、良い報告を待っていますから・・・!」

コクコクと首を縦に振っている殿下の姿に・・・私まで笑顔になってしまった。



(良かったーーー。これで、長い・・・長すぎた私の青春が終わるのねーーー。)



5回目にしてようやく私は殿下との婚約破棄を受け入れた。
婚約破棄という結果は変わらなかったけれどーーー私の気持ちは5回目にして初めて晴れやかだ。








ーーーで、終わると思っていた。







「フローラ・・・?これは一体どういう事なんだい?」

「いや、私にもさっぱり・・・何故、こんな事になってしまったのか・・・。」

誕生パーティーから一週間ほど経ったある日ーーー
屋敷で黒い笑みを浮かべながら、私に一枚の紙を見せ付けるかの様に眼前に広げているのはお兄様だ。
とにかく怒っていらっしゃる・・・。いや無理もないでしょう、私が嘘をついたと思っているのだから・・・

「フローラ・・・僕の気持ちを弄んでいるのかい?確かに君は・・・こう言ったよね?『殿下との婚約は無くなってしまいました。結婚はもう懲り懲りなので、アナスタシア公爵家で一生面倒見て頂けたりとかしませんか~?何ちゃってぇ』とーーー。」

「いや・・・誕生パーティーの時には確かに・・・殿下とそうお話しをした筈なんですけど・・・あれぇ?」

お兄様が私の眼前で広げている書類に何度も目を通すが・・・内容は変わらない。
流石の私もこの状況に冷や汗が止まらず、椅子の上で姿勢正しく座っている事しか出来ない。

「それで今日辺りに書類が届くと言っていたよね?ーーーこれが、その書類だよ?」

「・・・・・・・・。」



「これはーーー婚約破棄どころか・・・正式な婚姻を結ぶ為の書類じゃないか!!!どういう事なんだ!!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

はじめまして、期間限定のお飾り妻です

結城芙由奈 
恋愛
【あの……お仕事の延長ってありますか?】 貧しい男爵家のイレーネ・シエラは唯一の肉親である祖父を亡くし、住む場所も失う寸前だった。そこで住み込みの仕事を探していたときに、好条件の求人広告を見つける。けれど、はイレーネは知らなかった。この求人、実はルシアンの執事が募集していた契約結婚の求人であることを。そして一方、結婚相手となるルシアンはその事実を一切知らされてはいなかった。呑気なイレーネと、気難しいルシアンとの期間限定の契約結婚が始まるのだが……? *他サイトでも投稿中

今さら救いの手とかいらないのですが……

カレイ
恋愛
 侯爵令嬢オデットは学園の嫌われ者である。  それもこれも、子爵令嬢シェリーシアに罪をなすりつけられ、公衆の面前で婚約破棄を突きつけられたせい。  オデットは信じてくれる友人のお陰で、揶揄されながらもそれなりに楽しい生活を送っていたが…… 「そろそろ許してあげても良いですっ」 「あ、結構です」  伸ばされた手をオデットは払い除ける。  許さなくて良いので金輪際関わってこないで下さいと付け加えて。  ※全19話の短編です。

もう惚れたりしないから

夢川渡
恋愛
恋をしたリーナは仲の良かった幼馴染に嫌がらせをしたり、想い人へ罪を犯してしまう。 恋は盲目 気づいたときにはもう遅かった____ 監獄の中で眠りにつき、この世を去ったリーナが次に目覚めた場所は リーナが恋に落ちたその場面だった。 「もう貴方に惚れたりしない」から 本編完結済 番外編更新中

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい

瑞原唯子
恋愛
だから、きっと、恋を知らないままでよかった。 伯爵令嬢のシャーロットはもうすぐ顔も知らないおじさまと結婚する。だから最後にひとつだけわがままを叶えようと屋敷をこっそり抜け出した。そこで知り合ったのは王都の騎士団に所属するという青年で——。 --- 本編完結しました。番外編も書きたかったエピソードはひとまず書き終わりましたが、気が向いたらまた何か書くかもしれません。リクエストなどありましたらお聞かせください。参考にさせていただきます。

私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。 彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。 それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。 そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。 公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。 そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。 「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」 こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。 彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。 同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。

自由を求めた第二王子の勝手気ままな辺境ライフ

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
旧題:追放王子の辺境開拓記~これからは自由に好き勝手に生きます~ ある日、主人公であるクレス-シュバルツは国王である父から辺境へ追放される。 しかし、それは彼の狙い通りだった。 自由を手に入れた彼は従者である黒狼族のクオンを連れ、辺境でのんびりに過ごそうとするが……そうはいかないのがスローライフを目指す者の宿命である。 彼は無自覚に人々を幸せにしたり、自分が好き勝手にやったことが評価されたりしながら、周りの評価を覆していく。

私を侮辱するだけの婚約者はもういりません!

杉本凪咲
恋愛
聖女に選ばれた男爵令嬢の私。 しかし一向に力は目覚めず、婚約者の王子にも侮辱される日々を送っていた。 やがて王子は私の素性を疑いはじめ……

処理中です...