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本編
豚では無く・・・エドマンドです!
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「絶っっっ対に嫌ですわ!あんな〝豚公爵〟にエスコートされるだなんて!!!」
食後のティータイムで怒り狂っているのは、私の姉でハンメルン家長女のマチルダ・ハンメルン、13歳だ。
私の名はフレイヤ・ハンメルンーーー歳は10歳になる。
貿易商を営んでいるお父様が、その功績を認められて子爵位を賜ったのは・・・私が産まれる少し前の事だと母から聞いた。
お父様のお店では国外から取り寄せた物を多く取り扱っており、新しい物好きの貴族界では一目置かれているお店だ。
経営は順調らしく・・・私達ハンメルン家は本来、子爵位では持てない様な王都の一等地にある屋敷で、贅沢な暮らしをしている。
「口を慎みなさい・・・マチルダ。ハイネス公爵家と言えば・・・長年、外交を任されていらっしゃる由緒正しきお家なのですよ。」
お父様の雷が落ちる前にと・・・焦って姉を窘めているのは、お母様だ。
「でもお母様・・・!あんまりですわ!よりにもよって・・・何故、〝豚公爵〟なのですか?!」
ちなみに姉が先程から連呼している〝豚公爵〟とは・・・向かいの屋敷に長年住まわれている、ハイネス公爵家の一人息子であるエドマンド・ハイネスの事である。
今やこの王国において最も重要な〝外交〟を任されている・・・筆頭公爵家の嫡男だ。
「お姉様・・・エドマンドにいくら何でも失礼です。見た目が少し大きめというだけで・・・彼はとても素晴らしい殿方ですよ?」
黙って聞いていたら好き放題言うお姉様に思わず、苦言を呈してしまう。
だってエドマンドは私と同い年で・・・私達2人は幼なじみなのだ。
今振り返って見れば・・・ハイネス公爵家と何とかお近付きになりたい両親の策略だったのだろうが、私とエドマンドは物心ついた頃には、もう既に一緒に居るのが当たり前の存在だった。
確かに彼は、見た目は幼い頃より大きめで有ったが・・・・・・公爵家の嫡男という事を振り翳す訳でも無ければ、私が女だからと言って見下す様な事もしない。
人の本質をきちんと見て、思いやれる・・・とても良い奴なのだ。
そんな幼なじみを悪く言うお姉様に、姉妹とはいえ嫌悪感を向けずには居られまい。
「フレイヤ・・・、貴方はあの豚と仲良しだものね?」
「豚では無くエドマンドです!まぁ・・・幼なじみですから、仲は良い方だと思いますが・・・」
「なら、エドマンド様のエスコートはフレイヤにお譲りするわ?きっとエドマンド様もその方が喜びますでしょうし?ーーー良いでしょう?お父様・・・!」
お姉様はこの状況を打破出来るとっておきの思い付きに瞳を輝かせながら、お父様の方へと擦り寄って行く。
「うむ・・・まぁ、ハイネス公爵も恐らくフレイヤの方を誘いたかった所を、礼節を重んじてマチルダにしただけだろうしな・・・。で無ければ、こんなギリギリに申し出する意味が無い。」
お父様言う所の〝礼節〟とは・・・我が家の様に決まった相手のいない姉妹が居た場合は、年功序列に則ってお誘いをしなくてはいけないという、貴族界での暗黙の了解みたいなものの事だ。
つまり我が家の場合、私達二人共に3日後に控えている舞踏会のエスコートのお相手が決まっていないので、お姉様から順番にお誘いしなくては失礼に当たるという訳である。
ちなみに私の国では、パーティーや舞踏会の招待状を受け取れるのは男性のみだ。
女性は招待された男性からエスコートの申し出を受けて、初めて社交界へと繰り出せるのだ。
但、茶会等のお昼間に開催されるものについては、女性でも招待を受ける事が出来る為、私達姉妹は多く招待を受けており、比較的顔も広い。
ちなみに、
エドマンドも筆頭公爵家と言う事も有り、今まで沢山の招待を受けていた様だけど・・・人が多い所が苦手らしく全て断っていたのだが・・・今回は王族主催のもので断る訳には行かず、憂鬱だと数日前に漏らしていた。
「でも旦那様・・・、お相手は公爵様ですよ?お断りするので有れば、それ相応の理由が必要ですわ?」
焦るお母様の意見はご最もだ。
いくら公爵が望んでいたとしても、子爵位の我が家が公爵の申し出を断るなんて選択肢は無い。
「知り合いに頼んで何とかマチルダもパーティーに行ける様に算段を付けよう。僅差でそちらの方の誘いを先に受けてしまったという体にすれば・・・角も立たんだろう。」
「お父様、私の隣に相応しい殿方でお願い致しますわよ?!」
「こら、マチルダ!旦那様を困らせるんじゃありません!」
とうとうお母様からのチョップを受けたお姉様は、ようやく萎らしく自分の席へと戻った。
私はと言うと、我存ぜぬを貫いてひたすら紅茶を優雅に啜っている。
「フレイヤ・・・そういう事だ。良いな?3日後のパーティーは、エドマンド様と行きなさい。」
「ええ、喜んで。」
満面の笑みで答えて見せると、お父様は少し安心したのか小さく溜め息をついた。
食後のティータイムで怒り狂っているのは、私の姉でハンメルン家長女のマチルダ・ハンメルン、13歳だ。
私の名はフレイヤ・ハンメルンーーー歳は10歳になる。
貿易商を営んでいるお父様が、その功績を認められて子爵位を賜ったのは・・・私が産まれる少し前の事だと母から聞いた。
お父様のお店では国外から取り寄せた物を多く取り扱っており、新しい物好きの貴族界では一目置かれているお店だ。
経営は順調らしく・・・私達ハンメルン家は本来、子爵位では持てない様な王都の一等地にある屋敷で、贅沢な暮らしをしている。
「口を慎みなさい・・・マチルダ。ハイネス公爵家と言えば・・・長年、外交を任されていらっしゃる由緒正しきお家なのですよ。」
お父様の雷が落ちる前にと・・・焦って姉を窘めているのは、お母様だ。
「でもお母様・・・!あんまりですわ!よりにもよって・・・何故、〝豚公爵〟なのですか?!」
ちなみに姉が先程から連呼している〝豚公爵〟とは・・・向かいの屋敷に長年住まわれている、ハイネス公爵家の一人息子であるエドマンド・ハイネスの事である。
今やこの王国において最も重要な〝外交〟を任されている・・・筆頭公爵家の嫡男だ。
「お姉様・・・エドマンドにいくら何でも失礼です。見た目が少し大きめというだけで・・・彼はとても素晴らしい殿方ですよ?」
黙って聞いていたら好き放題言うお姉様に思わず、苦言を呈してしまう。
だってエドマンドは私と同い年で・・・私達2人は幼なじみなのだ。
今振り返って見れば・・・ハイネス公爵家と何とかお近付きになりたい両親の策略だったのだろうが、私とエドマンドは物心ついた頃には、もう既に一緒に居るのが当たり前の存在だった。
確かに彼は、見た目は幼い頃より大きめで有ったが・・・・・・公爵家の嫡男という事を振り翳す訳でも無ければ、私が女だからと言って見下す様な事もしない。
人の本質をきちんと見て、思いやれる・・・とても良い奴なのだ。
そんな幼なじみを悪く言うお姉様に、姉妹とはいえ嫌悪感を向けずには居られまい。
「フレイヤ・・・、貴方はあの豚と仲良しだものね?」
「豚では無くエドマンドです!まぁ・・・幼なじみですから、仲は良い方だと思いますが・・・」
「なら、エドマンド様のエスコートはフレイヤにお譲りするわ?きっとエドマンド様もその方が喜びますでしょうし?ーーー良いでしょう?お父様・・・!」
お姉様はこの状況を打破出来るとっておきの思い付きに瞳を輝かせながら、お父様の方へと擦り寄って行く。
「うむ・・・まぁ、ハイネス公爵も恐らくフレイヤの方を誘いたかった所を、礼節を重んじてマチルダにしただけだろうしな・・・。で無ければ、こんなギリギリに申し出する意味が無い。」
お父様言う所の〝礼節〟とは・・・我が家の様に決まった相手のいない姉妹が居た場合は、年功序列に則ってお誘いをしなくてはいけないという、貴族界での暗黙の了解みたいなものの事だ。
つまり我が家の場合、私達二人共に3日後に控えている舞踏会のエスコートのお相手が決まっていないので、お姉様から順番にお誘いしなくては失礼に当たるという訳である。
ちなみに私の国では、パーティーや舞踏会の招待状を受け取れるのは男性のみだ。
女性は招待された男性からエスコートの申し出を受けて、初めて社交界へと繰り出せるのだ。
但、茶会等のお昼間に開催されるものについては、女性でも招待を受ける事が出来る為、私達姉妹は多く招待を受けており、比較的顔も広い。
ちなみに、
エドマンドも筆頭公爵家と言う事も有り、今まで沢山の招待を受けていた様だけど・・・人が多い所が苦手らしく全て断っていたのだが・・・今回は王族主催のもので断る訳には行かず、憂鬱だと数日前に漏らしていた。
「でも旦那様・・・、お相手は公爵様ですよ?お断りするので有れば、それ相応の理由が必要ですわ?」
焦るお母様の意見はご最もだ。
いくら公爵が望んでいたとしても、子爵位の我が家が公爵の申し出を断るなんて選択肢は無い。
「知り合いに頼んで何とかマチルダもパーティーに行ける様に算段を付けよう。僅差でそちらの方の誘いを先に受けてしまったという体にすれば・・・角も立たんだろう。」
「お父様、私の隣に相応しい殿方でお願い致しますわよ?!」
「こら、マチルダ!旦那様を困らせるんじゃありません!」
とうとうお母様からのチョップを受けたお姉様は、ようやく萎らしく自分の席へと戻った。
私はと言うと、我存ぜぬを貫いてひたすら紅茶を優雅に啜っている。
「フレイヤ・・・そういう事だ。良いな?3日後のパーティーは、エドマンド様と行きなさい。」
「ええ、喜んで。」
満面の笑みで答えて見せると、お父様は少し安心したのか小さく溜め息をついた。
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