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第一章 旅スタートタスート編
4話 逃亡失敗
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キヤメは一生懸命手を振り否定する。
「いやいやいやいや、あまりにも急すぎやしないか?準備とかいろいろあるだろ。」
「その点なら大丈夫です!もう全て整っています!」
ルシェは本棚の裏側から大きな鞄を取り出した。
「本来なら、キヤメの目のような魔法陣を探すところから始まる旅だったのですが、手間が省けました。」
「いやいやいや、なんで準備終わってんの?」
キヤメの質問に対し、ルシェは鞄を漁りながら説明する。
「旅に出ることを決意したのは2年前です。そこからコツコツと準備して万全の体制を整えました。」
ほら、お金もありますよ。と巾着をじゃらじゃら鳴らす。キヤメは頭の上に?を出す。
「え?2年前ってルシェ何歳?」
「14歳ですね。」
「今16!?の割には小さすぎない?」
「失礼な!」
ルシェは頬を膨らませた。そしてため息のような深呼吸をする。
「おばあ様が亡くなって4年が経ちます、3年前に現当主が変な宗教にハマり、ゼーテ家が侵食され、創造神様関連の本をすべてこの部屋に追いやられ、本の一部を壊され続けてきました。私はこの家を完全に嫌いになる前に出ていきたいのです。」
鞄を閉じ、持ち上げる。ルシェの小さな体躯の割に大きすぎる鞄は、アリが食べ物を背負っているようだった。
「そうか、さっきの模様の本の説明がやたらふわふわしていたのは、本の1部が破壊されたからなのか。」
「その通りです。旅に出る間、これらの本をここに置いて行くことだけが気がかりです…。」
ルシェはしゅんとした。
すると突然、ガゴンっと音がして天井が開く。月が斜め上から照らしていた。
「いけない!もう夜です!早く行かないと!」
ルシェは慌てて立ち上がる。キヤメもつられて立ち上がり、ルシェの後を追う。
「今頃家族は夕食の時間です。今のうちにキッチンに侵入して食べ物を貰って裏口から出ちゃいましょう!」
「ルシェは一緒に食べないの?」
「誰が食前によく分からない神に祈りを捧げる食事なんてするものですか!」
ルシェとキヤメは廊下を走る。ルシェの背負う荷物が振動で上へ下へと飛び跳ねた。
「ここがキッチンですね。コックがいるかもなのでそろーりといきま」「ルシェ?」
後ろからの凛々しい男の声がルシェの言葉を遮った。振り向くと白髪の長身の男が立っている。
「お、お兄様…。」
ルシェの顔は青く染まった。
「メイドが、ルシェが小汚い男を連れてきたと言っていたけど、彼だね?そんな大荷物を持って、どこへ行くの?夕食の時間だよ?」
つかつかとルシェの兄が近づいてくる。
「君は…不思議な眼を持っているね。せっかくだ。君は客人として、ルシェと共に夕食に参加してくれ。いつもルシェは参加してくれないから、君がいたら心強いだろう。」
ぐいっとキヤメの腕を丸太ですら握り潰せそうな力で掴み、キヤメの眼をよく観察した。
キヤメは腕に鈍い力を感じる。
「お兄様!やめてください…!」
「私はショウ。ゼーテ家の長男で、次期当主です。以後お見知り置きを。御名前は?」
ルシェの嘆きを無視してショウはキヤメに話しかける。
「…キヤメ。」
「キヤメさんですね。こちらへどうぞ。ルシェ、そこの荷物を後ろの戸棚に入れてこちらに来なさい。」
「………は、い……。」
ルシェは半泣きになりながら、ショウの指示に従う。ショウは貼り付けたような笑顔を見せながら分かりやすく威圧を放っていた。
キヤメはルシェを持って逃げようと足を踏み出したが、ルシェがキヤメの裾を小さな指で挟みふるふると首を横に振った。ショウはキヤメを一瞥して、静かに歩いた。
「いやいやいやいや、あまりにも急すぎやしないか?準備とかいろいろあるだろ。」
「その点なら大丈夫です!もう全て整っています!」
ルシェは本棚の裏側から大きな鞄を取り出した。
「本来なら、キヤメの目のような魔法陣を探すところから始まる旅だったのですが、手間が省けました。」
「いやいやいや、なんで準備終わってんの?」
キヤメの質問に対し、ルシェは鞄を漁りながら説明する。
「旅に出ることを決意したのは2年前です。そこからコツコツと準備して万全の体制を整えました。」
ほら、お金もありますよ。と巾着をじゃらじゃら鳴らす。キヤメは頭の上に?を出す。
「え?2年前ってルシェ何歳?」
「14歳ですね。」
「今16!?の割には小さすぎない?」
「失礼な!」
ルシェは頬を膨らませた。そしてため息のような深呼吸をする。
「おばあ様が亡くなって4年が経ちます、3年前に現当主が変な宗教にハマり、ゼーテ家が侵食され、創造神様関連の本をすべてこの部屋に追いやられ、本の一部を壊され続けてきました。私はこの家を完全に嫌いになる前に出ていきたいのです。」
鞄を閉じ、持ち上げる。ルシェの小さな体躯の割に大きすぎる鞄は、アリが食べ物を背負っているようだった。
「そうか、さっきの模様の本の説明がやたらふわふわしていたのは、本の1部が破壊されたからなのか。」
「その通りです。旅に出る間、これらの本をここに置いて行くことだけが気がかりです…。」
ルシェはしゅんとした。
すると突然、ガゴンっと音がして天井が開く。月が斜め上から照らしていた。
「いけない!もう夜です!早く行かないと!」
ルシェは慌てて立ち上がる。キヤメもつられて立ち上がり、ルシェの後を追う。
「今頃家族は夕食の時間です。今のうちにキッチンに侵入して食べ物を貰って裏口から出ちゃいましょう!」
「ルシェは一緒に食べないの?」
「誰が食前によく分からない神に祈りを捧げる食事なんてするものですか!」
ルシェとキヤメは廊下を走る。ルシェの背負う荷物が振動で上へ下へと飛び跳ねた。
「ここがキッチンですね。コックがいるかもなのでそろーりといきま」「ルシェ?」
後ろからの凛々しい男の声がルシェの言葉を遮った。振り向くと白髪の長身の男が立っている。
「お、お兄様…。」
ルシェの顔は青く染まった。
「メイドが、ルシェが小汚い男を連れてきたと言っていたけど、彼だね?そんな大荷物を持って、どこへ行くの?夕食の時間だよ?」
つかつかとルシェの兄が近づいてくる。
「君は…不思議な眼を持っているね。せっかくだ。君は客人として、ルシェと共に夕食に参加してくれ。いつもルシェは参加してくれないから、君がいたら心強いだろう。」
ぐいっとキヤメの腕を丸太ですら握り潰せそうな力で掴み、キヤメの眼をよく観察した。
キヤメは腕に鈍い力を感じる。
「お兄様!やめてください…!」
「私はショウ。ゼーテ家の長男で、次期当主です。以後お見知り置きを。御名前は?」
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「…キヤメ。」
「キヤメさんですね。こちらへどうぞ。ルシェ、そこの荷物を後ろの戸棚に入れてこちらに来なさい。」
「………は、い……。」
ルシェは半泣きになりながら、ショウの指示に従う。ショウは貼り付けたような笑顔を見せながら分かりやすく威圧を放っていた。
キヤメはルシェを持って逃げようと足を踏み出したが、ルシェがキヤメの裾を小さな指で挟みふるふると首を横に振った。ショウはキヤメを一瞥して、静かに歩いた。
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