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第十八章 日独交渉
海上要塞攻略
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「で、海上要塞を奪うなら、あなた達も協力してくれるわよね?」
「もちろんさ。何も問題はない」
アメリカ相手ならばキューバ軍は誰を気にすることもなく行動することができる。正直言ってアメリカ海軍は壊滅状態なので海上要塞を攻撃することに軍事的な意味はないが、アメリカの要塞を占領したという事実は士気を向上させるのに役立つだろう。
「そう言えば、海上要塞に武装はあるの? 前に妙高が通りかかった時は何も攻撃して来なかったらしいけど」
「対空砲と対潜ロケット砲が何門かあるらしい」
「対艦戦闘を捨ててるのね。合理的ではある」
「君達なら簡単に落とせるだろう?」
「ええ、もちろん。あんた達がちゃんと仕事してくれればね」
外側から攻撃するだけで降伏してくれればいいが、そう簡単には行かないだろう。月虹が海上要塞を使うにはキューバ軍に突入してもらって占領する必要がある。
「まずは情報集めね。どこを襲うか決めないと」
「そうだね。だが実のところ、目星は付いてるんだ。キューバに近いのから奪った方がいいだろう?」
「ええ、そうね。奪ったらこっちの方に曳航してこなくちゃいけない訳だし。目標選定はあなたに任せるわ。こっちは戦力を整えておく」
「了解だ」
そういう訳で瑞鶴とゲバラは海上要塞襲撃の準備に取り掛かった。一度決まれば動き早く、襲撃が決行されたのは一週間後のことであった。
○
一九五六年一月二十一日、キューバ中部トリニダード沖。
「よし、皆揃ったわね。じゃあ出撃しましょうか」
瑞鶴はまたしても大和の艦橋にいた。今回の作戦には大和にも参加してもらうことにしたからである。大和はいるだけで相当な威圧になるが、もれなく信濃が着いてくるし、信濃単騎だと不安だからと大鳳も着いてくる。一石三鳥なのである。
瑞鶴は大和と密に連絡を取る為に大和の艦橋から自分の艦を操る予定だ。瑞鶴は有賀中将に大和の出撃を頼み、月虹と第五艦隊の空母達にも進軍を命令した。大和を中心として空母四隻というなかなかの大艦隊が出撃したのである。
○
目標はフロリダ海峡の東端に配置されている、キューバ軍が名付けるところの第12番海上要塞である。前線に近いので比較的しっかり利用されており、フロリダ海峡を日本の潜水艦などが通過しないよう見張っているようである。
第12番海上要塞の南東200kmほどのところで、艦隊は行動を始めた。
「じゃあ行くわよ。全艦載機を発艦。海上要塞を襲撃する」
『うむ。任せろ』
『承知した……』
グラーフ・ツェッペリンと信濃がすぐさま発艦を開始する。
「そう言えばだけど、信濃、大鳳とはどう連絡すればいいの?」
『今更……。我が伝えておく故、心配は要らぬ』
「分かった。よろしく」
『承知した』
かくして爆撃機およそ90機が飛び立った。艦隊はなおも速度を緩めず、海上要塞への距離を詰めていく。
「あ、そうだ。有賀、海上要塞に降伏するよう呼びかけておいて」
「分かった。すぐに手配しよう」
今回の目標は可能な限り無傷な状態で海上要塞を確保することだ。降伏してくれると助かるのだが、流石に戦わずして降伏というのは軍人の意地が許さないようだ。
「『我が軍に対する冒涜と受け止める』だそうだ。降伏する気は全くないな」
「そうだろうと思ったわ」
「ふむ。一度降伏を呼びかけておけば、こちらに殲滅の意図がないと相手に知らしめることができる。そういうことだね?」
「ええ。流石は大和の元艦長ね」
「別に大したことではない。君こそ、知恵が回るな」
「ふふ、ありがと。じゃあ攻撃を開始するわ。そっちは適度に降伏を呼び掛けておいて」
「任せてくれ」
すぐに攻撃隊が海上要塞の上空に到達した。海上要塞はゲバラの情報通り、その円形の屋根に20門ほどの対空砲と無数の機関砲が設置されていた。対空砲は必死に攻撃してくるが、その程度の数を人間が操作するのでは爆撃機すら落とせない。
『瑞鶴、爆撃するか?』
「あんまり傷付けたくないんだけど、少しは攻撃しないと仕方ないわよね。ツェッペリン、どこでもいいから端っこの方を爆撃して。同じところに何発か落として」
『了解だ』
ツェッペリンは4機の編隊で急降下爆撃を仕掛ける。アメリカ軍は機関砲で健気に迎撃してくるが意味はない。独特の不気味なサイレンのような音を立てて急降下し、激突寸前で爆弾を投下した。風圧で周囲の兵士が何人か吹き飛ばされた。
投下された爆弾は簡単に海上要塞の上甲板(果たしてこれが船なのかは分からないが)を貫通し、内部で爆発を起こしたようであった。爆撃する場所を限定したお陰で、ドックが一つ使えなくなるだけで済む。
「ツェッペリン、もう少し爆撃してみて。同じ場所をね」
『まったく、我をこき使いおって』
「活躍できるんだからいいでしょ」
ツェッペリンは数度急降下爆撃を行い、もちろん無傷のまま、海上要塞の一角を完全に破壊した。すっかり屋根が崩れ落ちて、それなりに立派な浮きドックが顔を見せていた。
「有賀、敵の様子は?」
「降伏する気はないようだ」
「じゃあ、次の段階に移るわ」
「大和で敵を脅したらどうだ?」
「それは最後の切り札に残しておきたい」
大和が主砲の射程に敵を収めるまで数時間はかかるだろう。瑞鶴は次の手を打つことにした。
「もちろんさ。何も問題はない」
アメリカ相手ならばキューバ軍は誰を気にすることもなく行動することができる。正直言ってアメリカ海軍は壊滅状態なので海上要塞を攻撃することに軍事的な意味はないが、アメリカの要塞を占領したという事実は士気を向上させるのに役立つだろう。
「そう言えば、海上要塞に武装はあるの? 前に妙高が通りかかった時は何も攻撃して来なかったらしいけど」
「対空砲と対潜ロケット砲が何門かあるらしい」
「対艦戦闘を捨ててるのね。合理的ではある」
「君達なら簡単に落とせるだろう?」
「ええ、もちろん。あんた達がちゃんと仕事してくれればね」
外側から攻撃するだけで降伏してくれればいいが、そう簡単には行かないだろう。月虹が海上要塞を使うにはキューバ軍に突入してもらって占領する必要がある。
「まずは情報集めね。どこを襲うか決めないと」
「そうだね。だが実のところ、目星は付いてるんだ。キューバに近いのから奪った方がいいだろう?」
「ええ、そうね。奪ったらこっちの方に曳航してこなくちゃいけない訳だし。目標選定はあなたに任せるわ。こっちは戦力を整えておく」
「了解だ」
そういう訳で瑞鶴とゲバラは海上要塞襲撃の準備に取り掛かった。一度決まれば動き早く、襲撃が決行されたのは一週間後のことであった。
○
一九五六年一月二十一日、キューバ中部トリニダード沖。
「よし、皆揃ったわね。じゃあ出撃しましょうか」
瑞鶴はまたしても大和の艦橋にいた。今回の作戦には大和にも参加してもらうことにしたからである。大和はいるだけで相当な威圧になるが、もれなく信濃が着いてくるし、信濃単騎だと不安だからと大鳳も着いてくる。一石三鳥なのである。
瑞鶴は大和と密に連絡を取る為に大和の艦橋から自分の艦を操る予定だ。瑞鶴は有賀中将に大和の出撃を頼み、月虹と第五艦隊の空母達にも進軍を命令した。大和を中心として空母四隻というなかなかの大艦隊が出撃したのである。
○
目標はフロリダ海峡の東端に配置されている、キューバ軍が名付けるところの第12番海上要塞である。前線に近いので比較的しっかり利用されており、フロリダ海峡を日本の潜水艦などが通過しないよう見張っているようである。
第12番海上要塞の南東200kmほどのところで、艦隊は行動を始めた。
「じゃあ行くわよ。全艦載機を発艦。海上要塞を襲撃する」
『うむ。任せろ』
『承知した……』
グラーフ・ツェッペリンと信濃がすぐさま発艦を開始する。
「そう言えばだけど、信濃、大鳳とはどう連絡すればいいの?」
『今更……。我が伝えておく故、心配は要らぬ』
「分かった。よろしく」
『承知した』
かくして爆撃機およそ90機が飛び立った。艦隊はなおも速度を緩めず、海上要塞への距離を詰めていく。
「あ、そうだ。有賀、海上要塞に降伏するよう呼びかけておいて」
「分かった。すぐに手配しよう」
今回の目標は可能な限り無傷な状態で海上要塞を確保することだ。降伏してくれると助かるのだが、流石に戦わずして降伏というのは軍人の意地が許さないようだ。
「『我が軍に対する冒涜と受け止める』だそうだ。降伏する気は全くないな」
「そうだろうと思ったわ」
「ふむ。一度降伏を呼びかけておけば、こちらに殲滅の意図がないと相手に知らしめることができる。そういうことだね?」
「ええ。流石は大和の元艦長ね」
「別に大したことではない。君こそ、知恵が回るな」
「ふふ、ありがと。じゃあ攻撃を開始するわ。そっちは適度に降伏を呼び掛けておいて」
「任せてくれ」
すぐに攻撃隊が海上要塞の上空に到達した。海上要塞はゲバラの情報通り、その円形の屋根に20門ほどの対空砲と無数の機関砲が設置されていた。対空砲は必死に攻撃してくるが、その程度の数を人間が操作するのでは爆撃機すら落とせない。
『瑞鶴、爆撃するか?』
「あんまり傷付けたくないんだけど、少しは攻撃しないと仕方ないわよね。ツェッペリン、どこでもいいから端っこの方を爆撃して。同じところに何発か落として」
『了解だ』
ツェッペリンは4機の編隊で急降下爆撃を仕掛ける。アメリカ軍は機関砲で健気に迎撃してくるが意味はない。独特の不気味なサイレンのような音を立てて急降下し、激突寸前で爆弾を投下した。風圧で周囲の兵士が何人か吹き飛ばされた。
投下された爆弾は簡単に海上要塞の上甲板(果たしてこれが船なのかは分からないが)を貫通し、内部で爆発を起こしたようであった。爆撃する場所を限定したお陰で、ドックが一つ使えなくなるだけで済む。
「ツェッペリン、もう少し爆撃してみて。同じ場所をね」
『まったく、我をこき使いおって』
「活躍できるんだからいいでしょ」
ツェッペリンは数度急降下爆撃を行い、もちろん無傷のまま、海上要塞の一角を完全に破壊した。すっかり屋根が崩れ落ちて、それなりに立派な浮きドックが顔を見せていた。
「有賀、敵の様子は?」
「降伏する気はないようだ」
「じゃあ、次の段階に移るわ」
「大和で敵を脅したらどうだ?」
「それは最後の切り札に残しておきたい」
大和が主砲の射程に敵を収めるまで数時間はかかるだろう。瑞鶴は次の手を打つことにした。
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