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第十五章 第二次世界大戦(攻勢編)
空母対空母Ⅲ
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「この私に、降伏せよと? あり得ませんわ」
シュニーヴィント上級大将が一時休戦を要求してきた。これに対するユニコーンの回答は、このようであった。
「しかし、こちらの主砲は失われてしまった。我々にグラーフ・ツェッペリンを撃沈し得るほどの火力は最早ない」
ラムゼー大将は冷静に答えた。
「まだ反対側の主砲が残っていますわ」
「それを言うなら、グラーフ・ツェッペリンもまだ主砲を半分残している」
「では、どうせよと?」
「まあ、そう聞かれると困るのだがな」
「偉そうにしておいて何も考えていないのですか。呆れましたわ」
「現状、我々にとって最前の選択肢は、ここで君が自沈することだ。そうでなければドイツ軍に鹵獲されるだろう」
時間をかければドイツ海軍の艦艇が集まってきて鹵獲されるだろう。グラーフ・ツェッペリンを早々に撃沈できなかった時点で、ユニコーンの状況は詰んでいるのだ。
「自沈? 鹵獲? 何を腑抜けたことを。そのような選択肢はあり得ませんわ。グラーフ・ツェッペリンを撃沈するまで、戦闘を停止することはあり得ません」
「ではどうするつもりなんだ?」
「やれることなら、まだあります。ふふ。ドイツ人に目にものを見せてくれましょう」
「分かった。好きにしたまえ」
ユニコーンはグラーフ・ツェッペリンに対し、交渉は論外であり、どちらかが倒れるまで戦闘は継続されるであろうと電報を送った。
○
「閣下、ユニコーンからの返答です」
その返事を受け取ったシュニーヴィント上級大将は顔を顰めた。
「馬鹿な……。ここから一体どうするつもりで――」
「ユニコーンが急速に接近してきています!!」
「何? 体当たりでもする気か?」
「そのようです!!」
「まったく、嫌な手を打ってくるな……。ツェッペリン、起きてくれ」
操艦はある程度手動でできるが、やはり船魄には劣る。ユニコーンの突撃を回避するべくシュニーヴィント上級大将ほツェッペリンを起こそうとするが、すっかり疲れ果てているツェッペリンは起きる気配がない。
「ダメだな、これは」
「ど、どうされるのですか!?」
「可能な限り回避行動を取れ! まあ回避できるとは思っていないが」
案の定、グラーフ・ツェッペリンの巨躯では急速に向きを転換することは叶わない。こういう時は小柄なユニコーンの方が有利である。それに両国の造船技術の差もあるだろう。
「ダメです! 衝突します!!」
「総員、衝撃に備えよ!!」
シュニーヴィント上級大将はツェッペリンの身体を支えつつ、自らも椅子の背を掴んで衝撃に備えた。そして、ユニコーンの艦首がツェッペリンの艦尾に激突した。
「んなっ、なん、だっ…………」
ツェッペリンはその衝撃で目覚めたようだ。しかし目覚めた瞬間から激痛に晒されているので、意識は朦朧としている。
「ユニコーンが突撃してきたんだ。君の艦尾に派手に食い込んでいるな」
「は……? クソッ……。痛いぞ、まったく…………」
「ユニコーン、止まりました」
「さて、どうしたものかな」
グラーフ・ツェッペリンとユニコーンはお互いにのめり込むようにして停止した。ほんの数十メートル先に敵艦があるという経験はシュニーヴィント上級大将にも初めてである。
「どうする、つもりだ……?」
「君は休んでおいてくれ。我々が何とかする」
「クソッ……」
ツェッペリンは取り敢えず悪態をついておく以外に考えを廻らすことはできなかった。と、その時であった。
「閣下! ユニコーンから敵兵が乗り込んで来ています!!」
「ほう。移乗攻撃とは、我々は本当に中世に来たのかな」
ユニコーンからイギリスの水兵が大挙して乗り込んで来た。
「閣下! 何を落ち着いてらっしゃるんですか!」
「大丈夫だ。こういう事態も想定してある。すぐに兵を向かわせて迎撃させよう」
「本当に、大丈夫なのだろうな……」
「ああ、安心してくれ」
「早く、皆殺しにしろ……。イギリス人などが、我に乗り込んでくるとは、虫唾が走る……」
「安心してくれと言ったろう」
シュニーヴィント上級大将の言葉は本当であった。ツェッペリンの飛行甲板の上で銃撃戦が行われ、それから僅か20分ほどで、艦内に侵入した敵を掃討したとの報告が入った。世界でドイツ軍だけが保有している突撃銃(アサルトライフル)の威力によって、たちまち敵を殲滅したのである。
「――ほら、言っただろう?」
「よ、よくやった。で、ここから、どうするのだ?」
「もう我々が仕事をする必要はない。空軍から援軍が来ている」
「空軍? 大丈夫、なのか?」
「ああ。ユニコーンの高角砲は半分は破壊しているからな」
つまりユニコーンの左から近付けば、人間の機体でも全く問題なく攻撃できるということである。
「お、噂をすればもう来たぞ」
「そう、か」
空軍のスツーカは独特のサイレンのような音を立てながら次々と急降下爆撃を仕掛け、精確に爆弾を投下していく。爆弾の一つは艦橋に命中し、艦橋は火の手に包まれた。
シュニーヴィント上級大将が一時休戦を要求してきた。これに対するユニコーンの回答は、このようであった。
「しかし、こちらの主砲は失われてしまった。我々にグラーフ・ツェッペリンを撃沈し得るほどの火力は最早ない」
ラムゼー大将は冷静に答えた。
「まだ反対側の主砲が残っていますわ」
「それを言うなら、グラーフ・ツェッペリンもまだ主砲を半分残している」
「では、どうせよと?」
「まあ、そう聞かれると困るのだがな」
「偉そうにしておいて何も考えていないのですか。呆れましたわ」
「現状、我々にとって最前の選択肢は、ここで君が自沈することだ。そうでなければドイツ軍に鹵獲されるだろう」
時間をかければドイツ海軍の艦艇が集まってきて鹵獲されるだろう。グラーフ・ツェッペリンを早々に撃沈できなかった時点で、ユニコーンの状況は詰んでいるのだ。
「自沈? 鹵獲? 何を腑抜けたことを。そのような選択肢はあり得ませんわ。グラーフ・ツェッペリンを撃沈するまで、戦闘を停止することはあり得ません」
「ではどうするつもりなんだ?」
「やれることなら、まだあります。ふふ。ドイツ人に目にものを見せてくれましょう」
「分かった。好きにしたまえ」
ユニコーンはグラーフ・ツェッペリンに対し、交渉は論外であり、どちらかが倒れるまで戦闘は継続されるであろうと電報を送った。
○
「閣下、ユニコーンからの返答です」
その返事を受け取ったシュニーヴィント上級大将は顔を顰めた。
「馬鹿な……。ここから一体どうするつもりで――」
「ユニコーンが急速に接近してきています!!」
「何? 体当たりでもする気か?」
「そのようです!!」
「まったく、嫌な手を打ってくるな……。ツェッペリン、起きてくれ」
操艦はある程度手動でできるが、やはり船魄には劣る。ユニコーンの突撃を回避するべくシュニーヴィント上級大将ほツェッペリンを起こそうとするが、すっかり疲れ果てているツェッペリンは起きる気配がない。
「ダメだな、これは」
「ど、どうされるのですか!?」
「可能な限り回避行動を取れ! まあ回避できるとは思っていないが」
案の定、グラーフ・ツェッペリンの巨躯では急速に向きを転換することは叶わない。こういう時は小柄なユニコーンの方が有利である。それに両国の造船技術の差もあるだろう。
「ダメです! 衝突します!!」
「総員、衝撃に備えよ!!」
シュニーヴィント上級大将はツェッペリンの身体を支えつつ、自らも椅子の背を掴んで衝撃に備えた。そして、ユニコーンの艦首がツェッペリンの艦尾に激突した。
「んなっ、なん、だっ…………」
ツェッペリンはその衝撃で目覚めたようだ。しかし目覚めた瞬間から激痛に晒されているので、意識は朦朧としている。
「ユニコーンが突撃してきたんだ。君の艦尾に派手に食い込んでいるな」
「は……? クソッ……。痛いぞ、まったく…………」
「ユニコーン、止まりました」
「さて、どうしたものかな」
グラーフ・ツェッペリンとユニコーンはお互いにのめり込むようにして停止した。ほんの数十メートル先に敵艦があるという経験はシュニーヴィント上級大将にも初めてである。
「どうする、つもりだ……?」
「君は休んでおいてくれ。我々が何とかする」
「クソッ……」
ツェッペリンは取り敢えず悪態をついておく以外に考えを廻らすことはできなかった。と、その時であった。
「閣下! ユニコーンから敵兵が乗り込んで来ています!!」
「ほう。移乗攻撃とは、我々は本当に中世に来たのかな」
ユニコーンからイギリスの水兵が大挙して乗り込んで来た。
「閣下! 何を落ち着いてらっしゃるんですか!」
「大丈夫だ。こういう事態も想定してある。すぐに兵を向かわせて迎撃させよう」
「本当に、大丈夫なのだろうな……」
「ああ、安心してくれ」
「早く、皆殺しにしろ……。イギリス人などが、我に乗り込んでくるとは、虫唾が走る……」
「安心してくれと言ったろう」
シュニーヴィント上級大将の言葉は本当であった。ツェッペリンの飛行甲板の上で銃撃戦が行われ、それから僅か20分ほどで、艦内に侵入した敵を掃討したとの報告が入った。世界でドイツ軍だけが保有している突撃銃(アサルトライフル)の威力によって、たちまち敵を殲滅したのである。
「――ほら、言っただろう?」
「よ、よくやった。で、ここから、どうするのだ?」
「もう我々が仕事をする必要はない。空軍から援軍が来ている」
「空軍? 大丈夫、なのか?」
「ああ。ユニコーンの高角砲は半分は破壊しているからな」
つまりユニコーンの左から近付けば、人間の機体でも全く問題なく攻撃できるということである。
「お、噂をすればもう来たぞ」
「そう、か」
空軍のスツーカは独特のサイレンのような音を立てながら次々と急降下爆撃を仕掛け、精確に爆弾を投下していく。爆弾の一つは艦橋に命中し、艦橋は火の手に包まれた。
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